世界中のどの文化圏においても、”数”と言うものは非常に重要な文化要素の一つと言えるでしょう。”数”一つ一つに対する思想や概念のようなものも文化毎に様々だったりします。例えば・・ そう言った思想や概念のようなものが異なれば、”数”の数え方なんかも勿論変わってきますよね?そこで今回は、日本の日常でみられる”数”に関する文化についていくつかご紹介したいと思います。


“数”の数え方

1、2、3、4・・って感じに数を一つずつ加算して数える方法は、その表記の仕方や音読方法は言語圏等によって異なるものの、世界中どの文化においても共通して用いられていますよね? 加えて、10、20、30・・とか、100、200、300・・のように、10進法に基づいた数を一単位として数える方法や、時間や暦のように12進法に基づいた数を一単位として数える方法も広く用いられています。ここで、話題として取り上げさせて頂きたいのが、5刻みで数を数える際の表記方法です。所謂、”画線法”って呼ばれるものです。以下をご覧下さいませ。
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やはり、文化圏毎に違う表記の仕方をするんですね。皆さんはどの表記を用いますか? 日本や中国等で用いられる”正”と言う表記。これは、漢字の一つです。五画で書ける漢字の中でも、表記が見やすいことから用いられるようになったと考えられているそうです。ただし日本においては、江戸時代までは”玉”と言う漢字が用いられていたようで、”正”が用いられるようになったのは明治時代以降なんだとか。ちなみに日本には、1~10の数を数える際の音読方法が複数あったりします。こんな感じに・・

① いち、に、さん、し(よん)、ご、ろく、しち(なな)、はち、く(きゅう)、じゅう
② ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、ななつ、やっつ、ここのつ、とお
③ ひ、ふ、み、よ、いつ、む、なな、や、こ、とお

また日本語の場合、加えて漢数字表記もあります。

ローマ数字表記:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10
漢数字表記①:一、二、三、四、五、六、七、八、九、十
漢数字表記②:壱、弐、参、肆、伍、陸、質(漆)、捌、玖、拾
※漢数字表記②に関しては、”壱”、”弐”、”参”以外はめったに用いられませんのでご安心ください。

海外の方が日本語を学ばれる際に、結構驚かれるそうです。特に、①②の音読方法は日常的に頻繁に用いられることから、なかなかメンドウなんだそう・・ たしかにそうですねぇ。


特定の数字に対するイメージや考え方

日本の文化には、文字や言葉には”力”のようなものが宿ると言う思想や考え方があったりします。一般的には、”言霊”なんて呼ばれたりしますね。これらの思想や考え方は、絶対的に信仰されているものでありません。勿論、一部の宗教等では重要とされている場合もありますが。しかしながら現代の世の中において、一般的に習慣や礼儀の一種として捉えられているものも多くあるんです。この思想や考え方は、数字に対してもやはり存在しています。特に”験かつぎ”なんかには、よく取り入れられているものだったりします。以下では、それらの例をいくつかご紹介しようと思います。

・1(一):
“初め”や”頂点(てっぺん)”、”唯一”の意味合いを有することから、非常に重要視されます。海外の他の文化圏でもよく見られる考え方と言えるでしょう。

・3(三):
日本人はとかく代表的なものを3つに絞り込むのが好きです。”三大〇〇”って具合に。大昔から海外から伝わって来る文化を積極的に取り込み、それらに順応してしまう性格があるせいでしょうか? 何らかの事柄について、良くも悪くも”ただ一つ”のものに断定しない傾向がどうもあるようです。また、”三すくみ”と言う考え方にもあるように、最も安定する形を好むと言う性格もあるとも言われています。こちらも海外の他の文化圏でも見られることの多い考え方ですね。

・4(四):
他の記事でも少し触れさせて頂きましたが、日本では”4(四)”は忌避されがちな数字の一つです。縁起の良くない数字とされることが多いんですね。理由はと言いますと、同じ音読をされる”死(し)”を連想するからです。前述した”言霊”と言う考え方に関係するものです。同様の理由で、”9(九)”なんかも”苦(く)”と同じ音読がされるために避けられたりします。”42″、”49″なんかも同じく忌避されます。

・5(五):
“3(三)”と同様に安定した形とされることから、好まれるのが”5(五)”です。万物は火、水、木、金、土の五元素からなる、とする考え方で知られる古代中国の”五行思想”なんかの影響が強いと言われています。音数的にも収まりが良いとされることから、”7(七)”と共に俳句や和歌において用いられる語数でもあります。少しばかり余談ですが、日本の特撮ヒーロー戦隊のメンバーの数は5人であることが非常に多いんです。

・7(七):
“5(五)”と共に俳句や和歌において用いられる語数として、やはり安定する数字と考えられています。”五七調”と言って、標語やスローガン、キャッチコピーなんかでは非常に重要視される数です。他には、日本では”虹”の色は一般的に7色とされていたりしますね。”春の七草”や”七福神”なんかもいい例でしょう。

・8(八):
こちらは特に漢数字の”八”の字が注目されることが多いでしょうか。”八”の字の形が、下に向かって広がっていく様が縁起が良いとする考え方があるんです(”末広がり”って言います)。近年では、”∞”を想起させる、って新しい意味合いも付加されたりしています。

・偶数:
数字一つ一つとはまた別に、”偶数”も縁起が良くないとされることがあります。理由は、”割り切れる”ことから、”別れ”や”破綻”を想起させるってわけです。コレ、思いついた人はなかなかの曲者じゃないかと個人的に思ってます・・ とは言え、結構な具合に日本では習慣や礼儀の一つとして知られていて、お祝い事の際の”ご祝儀”の金額なんかでは非常に重要視されたりします。この機会に、ちょっと頭の隅にでも覚えておいて頂くと良いかもしれません。

上記の他にも、10や12の倍数や、所謂”ぞろ目”数を重要視する思想や考え方なんかもあったりしますね。その性質や由来は様々とは言え、海外の異なる文化圏でも同じ数字が重要視されていたりするのは、とても興味深いことだと思います。いかがでしょうか?