“豆腐”は、中国や朝鮮半島等の東アジア地域、ベトナム、カンボジア、タイやマレーシア、インドネシア、ミャンマー等々の東南アジア地域の各国で日常食として知られている食材ですね。日本においても、”豆腐”は和食料理には欠かせない代表的な食材の一つです。豆乳を抽出した後、凝固剤を用いて固めることによって作られます。基本的な製造工程はほとんど同じではあるものの、実は各国各地域で食されている”豆腐”は、それぞれ結構違うんです。勿論、それぞれの文化圏の人々の好みや、メジャーな調理方法と言った食文化の違いに応じて、それぞれに適したものが作られているわけですね。ですから、日本で作られている”豆腐”は、やはり日本の食文化に適したものになっているんです。ただまぁ、現在の日本の食文化は結構幅広くって、世界各国各地域の食文化を取り入れたものになっておりますので、それらに応じてなかなか色んな種類の”豆腐”があったりするんですが。最近は、栄養豊富でローカロリーな健康食材ってことで欧米諸国をはじめ海外でも広く知られるようになってきているようですね? そんなわけで、この記事では日本の”豆腐”について、ご紹介しようと思います。

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日本に”豆腐”の製造方法が伝わったのは鎌倉時代(12世紀末~13世紀)の頃だと言われています。諸説ありますが、仏教の禅宗と共に伝えられたんだとか。禅僧によって研究されて発展した精進料理において、大豆を材料にした調理方法は非常に重要なものでした。”豆腐”もそれら調理方法の一つだったんです。大体15世紀頃には、食材として世間一般に広く知られていたようで、その基本的な製造方法も全国に伝わっていきました。”豆腐”の製造は、水や原料の良し悪しや配分に加えて、温度や湿度等の気候なんかにも非常に影響を受けてしまうかなり繊細な調理方法なんです。しかしながら、できあがるものの品質の良し悪しは別にして、基本的な製造工程はとても簡単なんですね? また、原材料も大豆と水と凝固剤(当時は”にがり”が用いられてました)のみってことで、それほど高価なものじゃなかったんです。ってなわけで、あっという間に日本の食文化における日常食の一つになったようです。江戸時代には、すっかり庶民の食生活にも浸透しており、幕府によってかなり厳しい物価統制がなされていました。ちなみに、江戸時代中頃には「豆腐百珍」って言う、豆腐料理の書籍が刊行されたりしました。豆腐料理が100品掲載されてたんです。好評だったらしく、続編も刊行されたんだとか・・「( ̄▽ ̄;) まぁ、それくらいに”豆腐”はすっかり和食料理において非常に重要な食材となっていたってことですね。近代以降は、その製造作業も機械化されたりして、とても効率化が進み、価格もより安価になっていきました。現在、日本における豆腐製造は大手企業によって工場等で大量生産されたりもしていますが、各地域毎の中小企業や個人商店等でも多くが製造されています。やはり、基本的には生鮮食品で長期保存が難しい食材であるとともに、新鮮な手作り製品ですから、そういった商品価値の維持が成功しているんでしょう。各地に人気の有名店があったりするのも面白いところです。

“豆腐”を用いた料理は・・ まぁ、もうたくさんあります。煮物、焼き物、汁物、蒸し物・・大体どんな調理方法にも適した具材ですから。でも、やっぱりまずは一度、”豆腐”そのものの風味や食感を楽しんで頂くためにも、”冷奴”で食して頂きたいな~って思います。勿論、一口目は調味料も薬味も付けずにそのまんま。二口目からは、お好みの調味料や薬味を存分に加えて~。お気に召して頂ければ幸いです。

日本の”豆腐”は一般的に次の4種類に分類されます。

・木綿豆腐
豆乳に凝固剤を加えて凝固させた後、布を敷いた型にそれを流し込んで圧搾/成形することによって製造されます。型に敷かれた布(木綿)の布地模様が豆腐の表面に付くことから木綿豆腐と呼ばれました。

・絹ごし豆腐
木綿豆腐よりも比較的濃いめの豆乳を用います。凝固剤を加えて凝固したものを型に流し込んで成形した後、水にさらして製造されます。水分保有量や水溶性ビタミン類の保持量が木綿豆腐よりも高く、また舌触りも滑らかなのが特徴。ちなみに、木綿豆腐は木綿の布地で、絹ごし豆腐は絹の布地で豆乳を濾して作られるってわけではありません。

・ソフト豆腐
絹ごし豆腐と同様、濃いめの豆乳に凝固剤を加えて凝固したものを、木綿豆腐を作る際に行う圧搾/成形工程を加えたものです。

・充填豆腐
濃いめの豆乳を冷却した後、凝固剤を加えて凝固する。その後、合成樹脂製の容器にそれを充填して容器ごと加熱成形した後、冷却して製造されます。凝固する工程で加熱を施していることで殺菌処理がなされているため長期保存性を有するのが特徴。工場等での大量生産に適しており、また大量輸送性も高いため一般的な流通量が多いです。

上述した4種類の他にも、近年は食感の滑らかさや口溶けの良さに更にこだわった豆腐製品も登場しています。凝固剤の量や種類、凝固時の加工温度等が色々工夫されているんです。台湾の豆花(ドウホワ)(tāu-hue)なんかは非常によく似ていますね。また、枝豆やピーナッツと言った大豆以外の豆類を用いた豆腐なんかも市販されていたりします。レンズ豆、ひよこ豆、エンドウ豆なんかを用いた豆腐を出してくれる居酒屋さんなんかもあったりして、豆腐が改めて注目される食材になったことが感じられます。


凝固剤について

“豆腐”の原材料は大豆と水と凝固剤です。大豆を絞ることによって得られる豆乳を凝固剤で固める・・ とってもシンプルな製造工程ですよね? じゃあ、この凝固剤ってのは一体何なんだ?って思うでしょう。ちょっとここでご説明しておきますね? かつては、この凝固剤として、”にがり”ってものが用いられていました。”にがり”とは、海水から塩を作る際に抽出されるミネラル副産物のことです。主成分としては、塩化マグネシウム。この塩化マグネシウムに含まれるマグネシウムイオンが豆乳に含まれるタンパク質と化学反応を起こしてゲル化することで凝固作用が生じるんですね。第二次世界大戦以前までは、この”にがり”が主に用いられていたんですが、戦後当時の物資統制により入手が困難になったんです。そこで、代わりに石膏の主成分である硫酸カルシウムが用いられるようになりました。結果的に、この硫酸カルシウムの方が豆腐の凝固剤として適していたことから、その後はこちらが主に用いられるようになりました。なお、近年では”にがり”を用いた”豆腐”もその独特の風味の良さが改めて見直されて、市販されるようになってます。実際に食べ比べると、やはり風味が違うんです。皆さんも是非お試し下さい。


豆腐を用いた加工食品

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“豆腐”そのものも十分に完成された食品(or料理)だったりしますが、”豆腐”は素敵な食材だったりもするんです。”豆腐”を用いた加工食品にはユニークなものが多くあるんですね。その大元になっているのは精進料理の研究において生み出された調理方法の数々です。食感や風味をより良く、多彩に。また、他の食材の良さを活かすためだったり、食べ応えを増すためだったり。おそらくそれらを実現するのに、”豆腐”は非常に優秀な食材だったんですね。代表的なものをいくつかご紹介しておきましょう。

・油揚げ
豆腐を薄切りにして、中心部までよく熱を通して揚げたものです。きつねうどんの具材”きつね”や、いなり寿司等に用いられるのはコレです。その他、味噌汁の具材としても人気。煮物、炒め物、焼き物と言った様々な料理に適しているとてもメジャーな豆腐加工品の一つです。

・厚揚げ豆腐
厚めに切った豆腐の表面を油で揚げたものです。主に煮物、汁物料理の具材として用いられます。鍋料理の具材としても人気です。

・がんもどき
細かく崩して、水気をよく絞った豆腐に細かく切った野菜類を混ぜ込んだ後、油で揚げたものです。主に煮物、汁物料理の具材として用いられます。名前の由来は、鳥(雁(がん))の肉を模して(あるいは代用として)用いられたからって言われてます。

・乾燥豆腐
水分の多い豆腐を乾燥したものです。乾燥方法は様々で、塩漬け乾燥したり、凍結乾燥、燻製乾燥したもの等があります。”高野豆腐”は”凍り豆腐”の一つとしてよく知られてます。

・おから
正確には豆腐を用いた加工食品ではありませんが、豆腐に非常に関わりの深いものですので、ここで併せてご紹介しておこうと思います。”おから”は、豆腐や豆乳の製造時に大豆を絞った後に残った豆腐粕のことです。その見た目から”雪花菜(読みは”おから”)”or”卯の花(うのはな)”なんて呼ばれたりもします。”おから”の食材としての利用は、豆腐が作られるようになった当初からだったようです。搾りかすとは言え、栄養価は非常に高いんです。また、低カロリーで食物繊維も豊富であることから、近年は豆腐と併せて健康食材として注目を集めています。調理方法や利用方法が結構広かったりしますので、詳細はまた機会を改めて取り上げてみようと思います。

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実のところ、現在日本で製造されている”豆腐”の原材料になっている大豆はそのほとんどが輸入品なんです。また、その輸入している大豆も非遺伝子組み換え大豆に限定されているんです。かつては非常に多くの中小企業や個人商店がありましたが、現在は随分と減少してしまいました。日本の食生活の多様化による需要量の変化のせいもありますが、原材料である輸入大豆の価格高騰や、製造/流通/販売等に用いられる原油価格の高騰等もその要因だったりします。近年、地域毎の、そしてそれら地域の製造店毎に風味や食感が異なる”手作り感”ってものを感じることが少なくなってしまった、なんて話がよく聞かれたりします。製造技術や輸送/長期保存性等の技術が発展する一方で、やはり止むを得ず失われていくものもあると言うことなんでしょう。恵まれた時代だな~と思う反面、残念な気持ちも。それら全ての利点を残した形で、ちょうど良く活用できるようになって欲しいものです。なかなか難しいですけどねぇ・・