別の記事「謎料理」では、”何でそんな名前になったの・・?”って思うような日本の料理名をいくつかご紹介いたしました。まぁ、考えようによってはアチラはアチラで妙な魅力のあるネーミングセンスだと言えなくもないと思うんですが・・ さてさて、今回ご紹介するのは、自信をもって?そのネーミングセンスの素晴らしさをお伝えしたい日本の料理/食材の数々です。やはり、料理にしても食材にしても、その”名前”ってとても大事ですよね? 命名する側とその付けられた”名前”を受け取る側、双方のセンスが問われるところです。どちらかが欠けてしまっては定着しないわけですから。おそらく、初めて見聞きしても何のことか、どんなものか想像できないものが多いんじゃないかと思います。でも、その名称の由来や意味なんかを知れば、きっと不思議な感動をおぼえて頂けるかと。

「蕎麦/うどん」編

soba_01
soba_02
海外の方にも比較的知られているのが「蕎麦/うどん」類の名称の数々です。ただ”具材名+蕎麦/うどん”って名称よりも魅力が増しているものばかりかと。

・きつね:
油揚げ(煮付けたものの場合も有り)が乗っかります。油揚げの色が”きつね”に似ていることから。

・たぬき:
揚げ玉(「天かす」とも言って、天ぷらの衣のこと)が乗っかります。有名な説としては、天ぷらの「タネ(具)」を抜いた、つまり「タネヌキ」が「たぬき」になったとか。結構諸説あってどれも興味深いんですよ?

・月見:
玉子が乗っかります。おつゆに浮かんだ玉子が”月”のように見えることから。

・雪見:
大根おろしが乗っかります。大根おろしが「雪」みたく見えることから。あまりメジャーではないようで、そのまんま「おろし蕎麦/うどん」って呼ばれる方が多いですね。

・ちから:
お餅(焼き餅)が乗っかります。日本では元来お餅は縁起物で、食べると神様の”力(ちから)”を授かれるって意味合いがあるんです。

・化かし合い:
油揚げと揚げ玉の両方が乗っかったものです。日本では昔から、”きつね”と”たぬき”は人を化かす生き物としてお話によく登場するんです。で、その両者が乗っかってるってことで「化かし合い」なんです。正に今回の記事のテーマに沿ったネーミングセンスです。
※尚、京都では刻んだ油揚げに葛餡をかけたうどんのことを「たぬき」と呼んだりします。また、大阪では油揚げの乗った蕎麦を「たぬき」と呼んだりするって感じに地域によって異なってたりします。「たぬき」の名称由来に関して説が多いのはそういう事情もあるんです。

「お鮨/寿司」編

oinarisan01
今やお店毎にとんでもない数のバリエーションがある「お鮨/寿司」ですが、大抵はネタの名前そのままなのが多いんですね。そんな中でも下記はネーミングセンスがキラりと光るものばかりです。

・お稲荷さん:
煮付けた油揚げを袋状に開いて酢飯を詰めたお寿司です。「お稲荷さん」は主に稲荷神(宇迦之御魂神)をお祀りした神社(稲荷神社)のことです。で、それらのお社のお使い(神使)が”きつね”なんです。その”きつね”の色からって説とその”きつね”の好物が油揚げだったことからって説があります。

・かっぱ巻き:
海苔巻き寿司の一つで、キュウリを具材として巻いたもの。日本の代表的な妖怪(or未確認生物の一つとも)である「河童(かっぱ)」の好物がキュウリと言い伝えられていることから。もしくはキュウリの色が「河童」と同じ緑色だからとも。

・鉄火巻き:
こちらも海苔巻き寿司の一つで、マグロ等の赤身の魚を具材として巻いたもの。赤々と焼けた鉄のように見えることから。よくそんなことに気づいたもんです。

・なみだ巻き:
こちらもまたまた海苔巻き寿司の一つ。ワサビを刻んだ(orおろした)ものが巻かれてます。食べると”なみだ”が出るほど辛いので。

・軍艦巻き:
ウニやイクラ、シラウオ等、シャリ玉に乗せて握るのが難しいネタのお鮨用に考案された握り方の一つです。シャリ玉を囲うように海苔を巻いて器状にすることでそれらの具材を乗せるんですが、その海苔が巻かれたシャリ玉が”軍艦”に見えることから。

・七宝巻き:
複数の海鮮ネタを具として巻いた巻き寿司です。色鮮やかにキラキラしてる様が宝石のようで綺麗だからってことで。

「丼もの」編

oyakodon01
既に別の記事でも少しご紹介しましたが、日本と言えば「丼もの」です。皆さん、もうご存知ですかねぇ?

・親子丼:
鶏肉と玉子、玉ねぎを甘辛い出汁で煮付けた具をご飯に乗せた丼。”鶏”と”玉子”が親子だから・・ 天才の発想です。尚、”鮭”と”イクラ”でも「親子丼」ですが、こちらは「サーモンイクラ丼」ってまんまの呼ばれ方をすることが多かったりします。

・他人丼:
鶏肉以外(主に豚肉が多い)と玉子、玉ねぎを甘辛い出汁でに付けた具がご飯に乗っかります。言うまでもなく、他人だからですね。

・鉄火丼:
マグロ等の赤身の魚(具材をたれ漬けしたものも)をご飯(酢飯)に乗せた丼です。「鉄火巻き」と同様、赤く焼けた鉄のように見えるので。

・天津丼:
かに玉(具入りの卵焼きであればOKとも)に甘酢あんをかけたものがご飯に乗っかった丼。なぜ”天津”か・・? 理由は中華料理っぽかったから。謎命名ですが、その地名のチョイスがステキに思える一品です。

そんなわけで、今回は料理名を中心にご紹介してみましたがいかがでしたでしょうか? 他にも食材なんかでも面白いものがいくつかあったりします。”獅子に牡丹”に準えて、或いは”花札”の絵柄の一つ「猪と牡丹」から猪肉を「ぼたん」と呼んだり、その肉の色が桜色に見えることから馬肉を「さくら」(こちらも諸説有り)って呼んだり。薬味として用いられる人参をおろしたものを、その見た目から「紅葉(もみじ)おろし」とか。ウグイス餅とかも素敵ですね。今の私達にはちょっと浮かばなさそうなものがたくさんあるんです。ただし、こう言ったネーミングセンスの良し悪しと言うものは、どうしても宗教や信仰、思想上の価値観の違いが含まれてしまいます。映画や小説等の表現内容や手法なんかもやはりそう言ったことが問題になってしまいますよね? ですから、ただ一方的に面白がってしまったり、逆にただただ否定してしまうようなことなく、お互いにその歴史や文化を積極的に理解し合えることが大切なんだと思います。

こちらで取り上げていないものもまだまだたくさんございますので、ご興味を持たれた方は是非お調べ下さいませ。海外の面白いものがあったら、是非是非教えて頂きたいところです。