和菓子と言えば、”餡子(あんこ)”(もしくは”餡(あん)”)。海外の皆さんも含めて、一般的によく知られているのは材料に小豆を用いる”小豆あん”ですかねぇ? 実は、”餡子”の材料として用いられるのは小豆以外にもたくさんあるんです。豆類だけでも、ソラマメ、インゲンマメ、エンドウマメ。豆類の他の食材でも、サツマイモ、クリ、カボチャ、ゴマなんかを用いたものもあります。ちなみに、日本語で”餡(あん)”と言う場合、今回話題として取り上げる甘い方の”餡子”とは別に、生地等で包み込む料理の”具(”タネ”って呼び方もあります)”のことも”餡”って言います。”餡子”が甘い系限定、”餡”は意味合い的に甘い系もそうでないものも含むって感じにご理解頂ければです。一応、”餡”の作り方をざっくりご説明いたしますと・・ デンプン質や食物繊維が多く含まれる材料を煮詰めてペースト状にしたものに甘味を付けたもの、です。用いる材料によって、”小豆あん”、”イモあん”って感じに呼ばれます。実際に材料を集めて自作して頂くとよくお分かり頂けると思いますが、”餡”って非常に繊細な料理なんです。食材の扱い方、材料の配合量、火加減、煮詰め方なんかのほんの違いで出来が変わるんです。安定して食感や香りの良い美味しい”餡子”を作るのは、結構至難の業なんですよ?
さてさて、この”餡”。6世紀くらいに、中国から伝来した”塩餡”が元になってるんだとか。その名の通り、塩で味付けされていたためにしょっぱいものだったんだそうです。小豆を材料にした”餡”が生み出されたのが鎌倉時代(13~14世紀)くらい。砂糖を用いたりすることで甘いものが作られるようになったのが更に後で16世紀くらいのことです。食材そのものの甘味を生かした”餡子”もあったようですが、今みたく、菓子の主な材料となったのは江戸時代に入ってからなんて説もあります。そもそも当時は、料理に用いる基本調味料に砂糖が必ずしも含まれているような時代ではなかったんですね。ですから、和菓子に用いられるような甘い味の”餡子”は、結構最近のものなんです。甘いものが高級品として扱われていたのは、世界中どの地域の歴史においても共通していることですから、”餡子”も御多分に漏れずって感じでしょうかね。そんな経緯を経て、ようやく現在の”餡子”が一般にも知られるようになったわけですが。ただまぁ、江戸時代には、和食の伝統的な料理技術の多くが出来上がっていたこともあって、和菓子の開発は非常に盛んになったようです。”餡子”の風味や食感、”餡子”を包んだり、挟んだりする生地の工夫等々、現在食されている”餡子”を用いた和菓子の製法なんかのほとんどは、江戸時代後期から明治/大正時代くらいの結構短い期間の内に完成されたものなんです。明治/大正時代になると、欧米諸国から洋菓子文化がどば~っと流入してきましたから、その頃には既に和洋文化が融合した菓子類開発の方が盛んに行われていたんでしょう。それ故に、”餡子”を用いた和菓子はこうギュッと”質”が凝縮されている感じがするんです。うーん、なかなか上手く言葉でご説明するのが難しいところですね。こればっかりは、実際に食して頂くしかないですかね・・
こしあんvsつぶあん
日本の”餡子”には、永遠のテーマとしてこの”こしあんvsつぶあん”って命題があります。特に”小豆あん”についての話題ですね。”こしあん”って言うのは、小豆等の材料を煮詰めていった後に裏漉しすることによって余分な皮や種子、繊維などを取り除くことによって、なめらかな食感にした”餡子”のことです。”つぶあん”は、裏漉しの工程を行わずに材料の粒(皮や種子、繊維など)を残した”餡子”です。果たして、どっちが「美味しい」のか?って話です。まぁ・・ 結局個人の「好み」次第って結論になるわけですが・・( ̄▽ ̄)/~~ しかし、まぁ、どんな菓子にどのように使うのかによって全然違うのは確かです。当然、それによって好みの和菓子の種類なんかも大きく変わってくるでしょうから。”餡子”を用いたお菓子を食べる際には、ちょっと気にして頂くと良いかもしれませんね。”餡子”の繊細さがお分かり頂けると思います。