「和食」の良し悪しは「出汁」次第。美味しさの秘訣と言っても過言ではないでしょう、ってな感じのことを何度かお話ししましたが。さて、「和食」は海外の料理等と比べて、”薄味”とか”淡白”なんてことがよく言われたりします。確かに「和食」には、味付けが濃かったり、油っこかったりって料理は少ないんですね。目立って分かるような刺激の強い味のものはあまりありません。おそらく、ただ”薄味”だったり”淡白”な料理だと物足りなさを感じてしまうところですが、それを「だし」というものあることでとっても奥深い味にしているのが「和食」の魅力だと言えるでしょう。と言っても、ですね? 昔から日本人だって、味に刺激と言うか、アクセントみたいなものを欲しがってきたんです。つまり香りや味の強い香味料にあたる食材です。で、まぁ色々な食材を試してみたわけです。「そば」「うどん」「豆腐(冷奴)」「刺身」・・ いずれもそれだけ(”タレ”や”お汁(つゆ)”は付属)だと、とってもあっさりとした料理です。ちょっと物足りないかもしれません。しかし、これらに何かしらの香味料を少しばかり加えるだけで・・ ウマー!!ってなるんですね~ そんな香味料の類を「薬味」と呼びます。

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ワサビ、和からし、ニンニク、ショウガ、ミョウガ、ネギ、シソ、山椒、海苔、唐辛子、ゴマ・・ 大根おろしなんかもそうですね。「薬味」とされる食材の多くは、その香りや味が非常に強いが故に、殺菌/抗菌力があったりします。日本は「刺身」のように、生食をする食文化です。どうにかして生に近い状態(新鮮な状態)で魚介類等を美味しく食べられないだろうか? 素材そのものの味を損なわない形で食べられないものか?ってことにも非常に注力したんですが、まぁこの「薬味」はとってもニーズに合っていたわけです。

世界各国/各地域によって、それぞれ特徴的な、代表的な香味料や香辛料とかって色々ありますが、「和食」におけるそれらはこれらの「薬味」と言っていいかもしれません。まぁ、如何せん香りや味が特徴的なものが多いですから、人によって好みが分かれてしまう食材ばかりですが・・ 皆さんのお好みの「薬味」が見つかることを願っております。

薬味いろいろ

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・ワサビ:
鮨や刺身の他、蕎麦やうどん等の麺類を冷やしで食する際に用いられる、日本を代表する薬味の一つです。その甘い香りと共に、鼻の奥にツーンっと突き抜けてくるような独特な辛味が特徴。日本原産のアブラナ科の植物でして、8世紀以前には既に食されていたって記録が残されています。日本の食文化の大きな特徴として、食材を加熱せずに食する”生食”があります。ワサビはその強い風味によって食材の生臭さを軽減すると共に、抗菌/防腐効果を有することから”生食”と非常に相性が良かったんでしょう。加熱するとその風味が損なわれることから、ワサビ自体は基本的に生食されます。一般的には、その根茎部分をすりおろしたものがお料理に添えられることが多いでしょうかね。ちなみに、葉っぱの部分もちゃんと食べられます。こちらは辛味や香りは少なくって、ちょっと苦味があります。ワサビ田と呼ばれるワサビの栽培地は清流として知られる地域が多いことから観光にもオススメですね。

・和からし:
アブラナ科のカラシナと言う植物の種子の粉を練ってペースト状にしたものです。ワサビとも唐辛子とも異なる、これまた独特の辛味が特徴ですね。こちらは中国を通じて伝わって来たものだそうです。他の香辛料等を加えて調味料として作られているマスタードとは全くの別モノと思って頂いた方がいいです。おでんや納豆、フライ類や焼売なんかを食べる際によく用いられますかね。実のところ、一般的に流通しているのはチューブ製品の”和からし”でして。そのほとんどは、西洋カラシナに油脂分や香味分を加えて作られたものだったりします。粉を練って作った本来の”和からし”は割と食する機会が少ないです。

・ニンニク:
世界中でよく知られている食材ですよね。それだけに、生産地域によって、風味や味がかなり違ったりします。日本産のニンニクに限って見ても、本当に様々なんです。日本には仏僧によって中国から伝わったんだそうです。ただし、当初はその香りの独特さと強さから料理に用いる食材としてではなく、滋養強壮等の効果を有する薬の類として扱われたとか。その後、肉類や魚介類の調理方法の研究が進められると共に、食材や薬味として用いられるようになっていったのが江戸時代中頃くらい。近代以降は欧米での食材としての調理方法が伝わったことで一般にも食されるようになりました。ニンニクをおろしたりスライスしたものを薬味として生で食するのは、日本ならではかもしれませんね。刺身や焼肉なんかでは日本人にとってお馴染みの薬味です。

・ショウガ:
こちらも昔から世界中でよく知られている食材ですね。日本には、2、3世紀くらいには中国から伝わっていたんだとか。尚、当初は生薬として持ち込まれたみたいです。加熱しても風味があまり損なわれないことと、ニンニクほど香りが強烈じゃなかったこともあって、割と日本の食文化には早々に馴染んじゃいました。和食で用いられる調味料(醤油や酢、砂糖)との相性も良く、日本人好みの味付けに合っていたんでしょう。伝統的な和食料理にもよく用いられます。薬味としては、おろしたり刻んだりしたものが生で食されます。

・ミョウガ:
その何とも言えないアンニュイな気持ちにさせられる不思議な香りが特徴的なショウガ科の植物です。薬味としては、主に生食する食材に用いられますね。ミョウガそのものも天ぷらや酢の物料理、汁物料理の具材として用いられます。ミョウガを食べると、その香りのせいで物忘れしてしまう、なんてことが言われてまして。勿論、科学的根拠はございませんのでご心配なく。落語や民話なんかにもそれにまつわるものがあったりします。釈迦のお弟子さんの逸話にも登場していることから、おそらく原産は東アジアのどこか・・ 日本には、仏教と共に伝えられた食材とか・・? いまいちよく分からないことが多い植物です。

・ネギ:
東アジア地域では昔から食されている野菜です。日本でも7、8世紀頃には伝わっていたと言われています。生薬としての利用もあったそうです。全国で各地域の気候や地形毎に異なった品種が栽培されており、味や風味もそれぞれに特徴があります。名産地として知られている地域も多いですね。和食に用いられる食材としては非常に代表的な野菜と言えるでしょう。薬味としての利用も非常に幅広く、加熱しても味や香りが比較的損なわれないことから、温かい料理にもよく用いられます。麺類や納豆、冷奴なんかに欠かせません。

・シソ:
大きく分けると、赤紫色の”赤シソ”と緑色の”青シソ(大葉)”があります。薬味として用いられるのは後者の”青シソ”の方ですね。こちらもやはり、かの中国大陸から伝えられたものだとか。国内で栽培が広まったのは9世紀頃くらいと言われています。生薬としての活用も多かったようですね。特徴的なのは、やはりあの何とも言えない心地良い清涼感のある上品な香りです(私、大好きです)。ビタミン類やミネラル、食物繊維が超豊富で、かつ強い抗酸化/抗菌作用を有する、とってもハイパーな食材です。それ故に、刺身等の生食料理との相性は抜群です。加熱処理には弱いので、シソ自体はもっぱら生食されることがほとんどです。

・山椒:
日本原産の植物です。若芽、若葉や果実が可食部にあたります。どうやら1400~1500年くらい前には既に食されていたようです。日本最古の香辛料/薬味と言っても差し支えないかもしれません。薬味としては、鰻などの焼き物料理や煮物料理なんかに見た目の彩りも兼ねて用いられます。

・海苔:
薬味としては、”板海苔”を細切りしたもの(”きざみ海苔”って呼ばれます)と”青のり”が広く知られていますね。言わずと知れた、日本の伝統的食材です。食材としては8世紀以前には食されていたようですが、”板海苔”が一般的になったのは江戸時代以降と言われています。冷やしの麺類やお茶漬けなんかに用いられることが多いでしょうかね。”青のり”はお好み焼きやたこ焼きなんかにわさわさっと振りかけられるアレです。”板海苔”とは原材料がまた別のものなんですよ? こちらは、粉末状にしたものが薬味として用いられます。

・唐辛子:
世界中で知られた食材/香辛料ですよね? 日本でも食材/香辛料としてよく用いられる一方で、七味唐辛子や一味唐辛子って形で薬味としても用いられます。辛味をチョイ足しする感じですね。麺料理や味噌汁類、丼ものなんかとの相性がイイんです。
※七味唐辛子に含まれる原材料としては唐辛子の他に山椒、麻の実、胡麻、芥子の実、シソ、青のり、黒胡麻、生姜等々。唐辛子、山椒、麻の実、胡麻の4種類は必須で、残り3種の組み合わせは様々です。一味唐辛子は、唐辛子のみを粉状にしたものです。

・ゴマ:
食用の種類のものはインド地方が原産地なんだそうです。日本には、勿論中国を通じて伝わりました。こちらも生薬として扱われていたんだとか。7、8世紀頃から国内で栽培されていたようで、和食の食材としても昔から用いられていたようですが、国内での生産量は多くなかったようですね。現在、日本で食用として用いられているものの99%以上が海外からの輸入品だそうです。

・大根おろし:
大根をおろしたものです。独特の辛味と甘みが肉類や魚介類の臭みを消してくれることから、加熱調理したもの、生食するものを問わず広く薬味として用いられます。焼き魚なんかには欠かせませんね。油脂分を含む食材の消化を助ける効果もあるんですよ? 天ぷら、唐揚げ等の揚げ物料理との相性も抜群の薬味です。