現在、日本には非常に多くの果物が流通しています。それらは、そのまま食されるためのものもあれば、加工食品の原材料にするためのものも。国産のものに限らず、世界中の各国から輸入された果物も非常にたくさんあります。近代以降、海外の食文化が積極的に取り入れられていったことで、日本の食文化が急激に幅広いものになっていったんですね。その結果、海外から伝わった果物の栽培も盛んに行われるようになりました。日本の気候や地形、更には日本人の好みに合わせて品種改良等も進められていきました。近年、日本で生産される果物類はその多くが、海外でも非常に人気になっています。イチゴやブドウ、桃、メロン等々・・ ブランド化されているものもたくさんあります。本サイトの記事「果物(くだもの)(Fruits)」でも触れたとおり、日本で一般に流通している果物類の多くは海外発祥のものがほとんどです。それらのほとんどが、交易によってもたらされて来たものなんです。やはり、日本って地形上、島国であるために食用に適した果物類の種類も非常に少ないんですね? 昔から日本に自生していたと考えられる果物類の多くも、大陸由来のものだったりするわけです。
そんなわけで以下では、数少ない日本原産の果物類をいくつかご紹介しておきたいと思います。ただし、日本発祥の果物はやはりその種類も少なく、そのほとんどは生産量も少ないんです。そのため、一般に流通する機会も少ないものがほとんどだったりしますので、めぐり逢った際にはぜひご賞味頂ければです。
温州みかん
鹿児島地方を原産地とする柑橘類です。現在は静岡県や愛媛県、和歌山県等々、日本各地で生産されており、それぞれ地域によってブランド名も異なります。日本人には昔から非常になじみが深く人気のある果物です。”温州みかん”と言う名称は江戸時代後半頃に名付けられたようです。ちなみに、”温州(unshiu)”とは、みかんの名産地として名高かった中国浙江省の温州市のことだそうですが、こちらの原種を日本で栽培したものではないんだとか。英語では”Mikan”の他に、”Satsuma mandarin”とも呼ばれるんだそうですね?(※”Satsuma”とは鹿児島地方の昔の名称) 日本に自生していた”橘(たちばな)”や”シークワーサー”とはまた別の種類のものです。
柿
こちらも日本人には昔からなじみが深い果物です。北海道南部から本州、四国、九州全域に生息していました。日本以外にも、中国や朝鮮半島にも原種があるそうですね。16世紀頃にはポルトガルとの交易を経て、ヨーロッパやアメリカ大陸にも広まっていったとか。柿には”甘柿”と”渋柿”があり、そのまま食されるのは前者の方です。後者はアルコールに漬ける等による”渋抜き”を施した後に乾燥させることによって食用に加工されます。こちらは干し柿と呼ばれるもので、古くから一般的にも人気のある甘味でした。渋柿の苦みの元となる”柿渋”は非常に強い防虫/抗菌効果を有するために、衣類や家具類に塗布されたりしてきました。その葉っぱも、食物の保存等にも利用されてきたんです(柿の葉寿司等)。
和栗
栗も日本では古代から食用とされてきました。柿と同様、果実ばかりでなくその木も日本人の生活に広く利用されてきたようです。現在も全国各地で栽培されています。食用のものとしては、丹波地方(現在の京都府、大阪府、兵庫県を含む地域)を産地とする”丹波栗”はとても有名です。
山桃(すもも)
北海道や東北を除き、本州、四国、九州、沖縄地方に生息します。徳島県や高知県、和歌山県は有名な産地として知られています。コケモモなんかに近い果物ですね。果実は日持ちが良くないために主にジャムや果実酒の原材料として用いられ、一般的に生食する機会は非常に少なかったりします。常緑広葉樹であり、また暑さや大気汚染等にも強いこともあって、現在では都市部の公園や街路樹として植えられていることが実は意外と多いんです。ちなみに、それらは結実することは稀だそうです・・
和梨(やまなし)
洋ナシ、中国梨とは別種で、こちらも日本では昔から栽培されていた果物の一つです。元はヤマナシと呼ばれる野生種だったようで、品種改良が重ねられた結果、現在の”二十世紀”、”長十郎”、”幸水”等々の品種が出来上がりました。和梨は洋ナシや中国梨と比較して、非常にみずみずしく爽やかな甘みが強いんです。海外の方にも人気があるようですね。
ヤマブドウ
その名の通り、ブドウの一種です。現在生食用のブドウとして日本で流通しているものは海外原産のものばかりで、ヤマブドウの方は生食用のものは一般にはほぼ流通していません。近年はワインやジャム、ジュース等の加工品の原材料として注目されているそうで、山梨県や岩手県、岡山県等では栽培や品種改良が進められているようです。近い将来、他の海外原産のブランドブドウと並んで、日本原産の生食向けのヤマブドウが一般に流通するようになるかもしれません。
オニグルミ
海外でもよく知られるクルミの一種です。沖縄地方を除く日本全国に自生しています。先史時代から食用として採取されていたようですね。現在は生食用の他、加工品や料理用の食材として広く利用されています。
アケビ
北海道を除く日本全国に生息し、こちらも昔から生食されてきた果物です。生薬としても利用されていたようですね。しかしながら、現在は一般的にはあまり流通していません。
ビワ
原産地は中国だそうですが、こちらも日本には先史時代には持ち込まれていたようで、食用として知られていました。また、その葉も生薬としても広く利用されていたようです。柿や栗、柚子と並んで、商業用のものとは別に家庭菜園で栽培されていることが非常に多い植物です。千葉県、長崎県、和歌山県、香川県、愛媛県、鹿児島県等は産地として有名ですね。