食材の保存方法として「漬物」は世界各地で色んなものがありますよね? 食塩や酢、味噌、酒粕等の漬け込み材料を用いて野菜類を漬け込む調理方法です。漬け込むことで、食材のpH値が下げられるとともに空気が遮断されることで保存性が高まったり、熟成して風味が増したりするんですね? 他にも調理方法によっては「発酵」を伴うものもあります。日本の食文化にも勿論「漬物」はちゃんとございます。「香の物(こうのもの)」なんて呼び方もありまして、和食についてご紹介するうえで欠かせない料理の一つだったりします。おそらく、日本でお食事をとって頂けば、一度は目にすることになるはず。特に定食類やお膳類なんかにはほぼ必ず含まれてきますから。

「漬物」に限らず、所謂保存食の類って世界各地で独特の風味があって面白いですよね? その地域の風土なんかに合わせて、食材の違いは勿論のこと、下ごしらえや漬け方等の調理方法、調味料や香辛料なんかが異なるせいなんでしょう。日常の食生活に根付いているものですからやはり各地域それぞれの特色が表れるんですね。日本にも各地でそれぞれ本当に特徴的な「漬物」が多くありますので、是非お楽しみ頂きたいところです。まぁ、その調理方法故に塩分の高いものが多いですから、食べ過ぎには要注意ですが。

代表的な漬物一覧

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・浅漬け
野菜類を塩や酢、だし汁等の調味液に短期間漬け込むことによって作られる漬物です。漬け込む時間は数時間~2、3日ほどと少なく済み、調理も容易なために各家庭でもよく作られます。一晩漬けるだけのものなんかもあります(一夜漬け)。専用の調味液等も市販されていて、お好きな野菜の浅漬けを好きな分だけ作ることもできます。

・ぬか漬け
米ぬかを乳酸菌発酵させた”ぬか床”に野菜等を漬け込んで作る漬物。一説では中世以前に米ぬかを用いた漬物は作られていたとも言われますが、現在のぬか漬けの製造工程が確立されたのは江戸時代のことだそうです。非常に興味深い調理方法だったりしますので、詳しくはまた別の記事にてご紹介したいと思っております。

・たまり漬け
一度塩漬けにして保存性や食感を高めた野菜を塩抜きした後に、たまり(味噌のしぼり汁)や醤油で漬け込んで作られる漬物。大根やナス、キュウリ、ラッキョウ等がよく用いられる。

・いぶり漬け
製造工程に燻煙工程が含まれる珍しい漬物です。秋田県のものが有名です。豪雪地域で大根などを干して乾かすことが難しかったことから、屋内の囲炉裏の煙で燻ることで干し大根を作ったことが始まりだとか。大根やニンジン等を燻り〆めた後、ぬか漬けにして作られます。

・わさび漬け
わさびの根や葉、茎を細かく刻んだものを酒粕で漬け込んだものです。酒粕の独特な風味とワサビの辛味が非常に特徴的な漬物です。わさびの産地として知られる静岡県や長野県の特産品となっています。

・梅干し
現在では、梅の果実を塩や調味液で漬け込んだだけのもの(梅漬け)も含めて梅干しとして認識されて、一般的に広く流通していたりしますが。本来は塩漬けした梅を更に干したものです。日本の漬物を代表する一つと言えるでしょう。非常に歴史の長い伝統的な漬物の一つですので、詳しくはまた別の記事でご紹介したいと思います。

・柴漬け
ナス、キュウリ、青唐辛子、シソ等を塩漬けして乳酸発酵させたものです。京都漬物の一つとしてよく知られています。”柴”は元々”紫葉”が語源となっているそうで、赤紫色が美しい漬物です。現在一般流通しているものは、しば漬風味の調味液で漬けたものも多くなっています。

・千枚漬け
薄切りにしたカブの酢漬けにしたもので、京都漬物の代表の一つです。元々は塩漬けしたカブを乳酸発酵させたものだったそうですが、現在は酢漬けのものが一般流通しています。その名の通り、極薄にスライスされたカブが用いられているのが特徴です。

・すぐき漬け
カブの変種であるスグキナを用いた漬物です。塩漬けにしたものを乳酸発酵させて作られます。その歴史は江戸時代以前と伝えられていて、柴漬けや千枚漬けと並んで、京都漬物の代表の一つとされています。

・沢庵漬け
天日で干すor塩漬けすることで脱水した大根を塩やみりん、出汁などを用いて甘塩っぱく漬け込んだものです。梅干しと並んで、日本を代表する漬物の一つです。昔から全国各地で作られており、そのバリエーションも様々です。伝統的な製法で作られているもののいくつかはご当地の名物になっています。

・べったら漬
東京都の代表的な漬物です。大根を塩押し(塩漬けして水分を抜く)した後に砂糖、米麹などで漬け込んだもの。

・奈良漬
瓜、キュウリ、生姜等を塩漬けにして、更に酒粕で漬け込んで作られる漬物です。非常に歴史が古く、8世紀頃には作られていたとか。奈良県の特産品です。酒粕の独特な甘い発酵臭と味が特徴です。

・高菜漬け
カラシ菜の変種である高菜の漬物を特に高菜漬けと言います。高菜漬けには浅漬けにしたものと、熟成して乳酸発酵するまで漬け込んだものとがあります。後者は独特の風味を有していて、炒飯や混ぜご飯に用いられる他、炒め物等にしても食されます。唐辛子と共に炒めたものは豚骨ラーメンのトッピングとしても知られていますね。山形県の郷土料理として、高菜の一種の青菜(セイサイ)を用いた漬物(青菜漬け)があります。

・野沢菜漬
野沢菜を材料にして作られる漬物です。野沢菜も高菜等と同じくアブラナ科の植物で、信越地方の特産品の一つです。高菜と同じように、野沢菜漬けにも浅漬けにしたものと、熟成して乳酸発酵するまで漬け込んだものとがあります。いずれも高菜漬けよりも発酵臭が少なくさっぱりしています。

・広島菜漬
広島菜を材料に用いて作られる漬物です。広島県の特産品の一つとなっています。

・山海漬
キュウリや大根等と共に数の子を酒粕で漬けて熟成させたもの。新潟県の郷土料理として知られています。

・壺漬け
干し大根を刻んだものを醤油漬けにしたもので、鹿児島県をはじめとする南九州地方の代表的な漬物です。

・福神漬
用いられる野菜は、ダイコン、ナス、ナタマメ、レンコン、キュウリ、シソの実、シイタケ等。これらの野菜類を塩押ししたものを塩抜きして細かく刻んだ後、醤油、砂糖、みりんを混ぜた調味液で漬け込むことで作られます。日本の飲食店でカレーライスを注文すると、よく添え物として盛り付けられてくる漬物です。程よい甘塩っぱい味とポリポリとした食感が人気です。
※福神:七福神のこと。七種類の具材が用いられたことに由来するそうです。

・ガリ
薄切りにした生姜を甘酢で漬けたもの。色付けしない薄黄色のものや、色付けした薄桃色があります。お鮨の添え物としてお馴染みの漬物です。

・紅ショウガ
生姜を梅酢に漬けて作られます。色彩やかな真っ赤な色が特徴的です。たこ焼きやお好み焼き等の具材としてもよく用いられます。また、焼きそば、冷やし中華と言った麺料理の他、ちらし寿司や牛丼等の添え物としても目にする機会の多い漬物です。

・鰊漬け
短冊切りした大根、ニンジン、キャベツ等と身欠きニシンを塩、米麹で漬け込んで作る漬物。北海道~東北・北陸地方の郷土料理です。
※身欠きニシン:ニシンの干物

・松前漬
カズノコ、スルメの細切り、昆布をみりん醤油で漬けたものです。北海道~東北地方の郷土料理として知られます。

・沖漬け
醤油と酒を煮たてた調味汁に魚介類(イカ、アジ等がよく知られる)を漬け込んだもの。富山県のホタルイカの沖漬けは有名です。

・塩辛
魚介類の身や内臓を生のまま塩漬けにして発酵させたもの。イカ、タコ、エビ、オキアミ、イワシ等が材料として用いられる。オキアミの塩辛は、他の東アジア各国でも食されるシュリンプペースト等に近いでしょうか。