冬時期の日本における定番料理と言えば、「お鍋(おなべ)」です。文字通り、”鍋”を用いた料理のことでして、調理(煮炊き)しながら食べる料理です。一応「お鍋」と呼ばれる料理の定義を大まかにご説明しておきましょう。

“鍋”を用いて”具材”を煮炊きした料理

nabe2
“鍋”の素材は”土鍋””金属鍋”のように様々。特定の鍋料理専用の形状のものも有り。”具材”とは下ごしらえした食材のこと。材料それぞれに適した大きさ/薄さ/形状に切り揃えたり、加工することを”下ごしらえ”と呼ぶ。

“具材”を”鍋”で煮炊きしながら食べる

nabe3
食卓にて、食する人間自身が調理しながら食べるのが特徴。ただし、調理済みのものを保温加熱しながら食べる場合も有り。

複数人で一つの”鍋”を共有する

nabe4
調理済みの料理を個人用に配膳せず、一つの料理をみんなで分け合って食べるのが特徴。ただし、”おひとり様用”の鍋料理も有る。

都度都度、”鍋”から”取り皿(小鉢)”に食する分の具材を取る

nabe5
“鍋”から直接食べるのは厳禁。原則として”取り箸””おたま”等、取り分け用の器具を用いてそれぞれの”取り皿”に盛りつける。鍋料理それぞれの味付け次第で、”取り皿”にタレ(ポン酢/専用つゆ等々)や薬味類を加えて食する。

「お鍋」のように、調理をしながら食する料理という提供方法はかなり昔から行われていたようです。かつて日本の住居には、炊事場の”竈(かまど)”とは別に、ほぼ必ず”囲炉裏”が設けられていました。その”囲炉裏”を囲んで食事をするわけですが、その生活習慣に非常に適した調理方法だったんだろうと考えられています。つまりは、結構昔からとても一般的に根付いた日常の調理文化だったわけですね。しかしながら、明治維新を境に日本では住居の近代化が急速に進み、”囲炉裏”を有する家屋はなくなっていきました。第二次世界大戦後、日本の住環境は一層欧米化が進んでいきました。食文化も同様です。一般家庭における料理の配膳も個人単位向けのものになっていきました。その結果、「お鍋」はかつての日常的な料理から、少し(具材によってはとっても)特別感を有する料理になりました。しかし同時に、基本的には出汁を満たした”鍋”に具材を入れてぐつぐつ煮るだけというシンプルな調理方法ってことで一般的にも人気になったわけです。各家庭で「お鍋」をするために、それ専用の”家庭用コンロ”が市販されたことでその人気は不動のものになりました。

dashi
日本の「お鍋」の基本形は「寄せ鍋」と呼ばれるものです。出汁で以て色んな具材を煮て、ポン酢やその他のタレをつけるって感じの鍋料理です。後は、具材の組み合わせだったり、出汁に味噌や醤油などの他の調味料を加えるといったバリエーションの違いがあるわけですが・・ まぁ、その種類の多さと言ったら、海外の食文化への寛容さも相まってとんでもない数です。試しにスーパーマーケットなんかで「お鍋」の商品棚を覗いて頂くと、「・・(汗)」って感じになるかもしれません。大雑把に言えば・・ 世界中に存在するスープの種類、或いは美味しい”だし”が採れる食材の組み合わせの数だけ「○○鍋」なる料理が存在する感じでしょうかねぇ? それだけに、皆さんそれぞれお好みの「お鍋」がおそらくほぼ必ず見つかるんじゃないかと思います。

ishikari
それでは、代表的な「お鍋」をいくつかご紹介しましょう。尚、それぞれの詳細はちょっと割愛いたします・・ スープの種類に加えて、具材の組み合わせまで踏まえるともう何が何だかって感じになりますので。「寄せ鍋」「おでん」「しゃぶしゃぶ」「すき焼き」「湯豆腐」「ちゃんこ鍋」「水炊き」「ちり鍋」「もつ鍋」「石狩鍋」「きりたんぽ鍋」「あんこう鍋」・・(ごくごく一部ですよ~) 郷土料理になっているものも多いんですね? 地域それぞれで食文化が表れていているのも「お鍋」の魅力です。

最後にもう一つ。「お鍋」という料理の楽しみ方には、”〆(締め)”というものがあります。具材を食した後に残ったスープは、様々な食材が煮詰まることによって非常に美味しい出汁が凝縮されているわけでして。じゃあ、まぁ、それを無駄にする手はないですよね? ってなことで、ご飯や麺類などをそのスープに加えて食べるんです。人によっては、「お鍋」はこの”〆(締め)”を食べることこそが目的!なんて仰る方もいるくらいです。機会がございましたら、是非お楽しみ下さいませ。