和菓子には、見た目がとても繊細で美しいものが多くあります。やはりお菓子ですから、用いる食材や調理方法等によってその味や香りに工夫が施されているのは当然のことですが、とても特徴的なのは季節感を大切にしているものが多いところです。日本ならではの四季折々の自然の風景だったり、催し事なんかをモチーフにしていたり。”水羊羹”はその代表的なものの一つです。ちなみに、一般的に寒天が多く用いられている”羊羹”を”水羊羹”って言います。

さてさて、今回は”羊羹(ようかん)”についてご紹介します。”羊羹”は、小豆や抹茶、栗、芋等々、「餡子(あんこ)」の記事でご紹介した”餡”を型に流し込んで固めたお菓子類です。一般的には、これらの”餡”を寒天や小麦粉、葛粉なんかを加えて固めたものが”羊羹”として扱われています。元々は、中国から伝えられた料理(調理方法)だそうです。羊肉のスープに含まれるゼラチン質を冷え固まらせることによって作られる”煮凝り”の一種ですね。で、中世頃(12~15世紀頃)に日本に伝わって来た禅宗における”精進料理”にその調理方法が取り込まれて、動物や魚介類の肉等を用いない代わりに小豆等の豆類等を使った料理が考え出されたのが元になったと言われています。当初は、”餡”を蒸すことによって固めていたようです。時を経て、寒天等を用いて冷え固まらせる調理方法が江戸時代に生み出されるようになり、日本の和菓子を代表する一品になりました。現在、日本国内で老舗として知られるお店や、銘菓として知られる羊羹菓子もその多くがこの頃に作り出されたものだそうです。製法や技法も、その当時に出来上がってしまっているものが結構多いんだとか。それらがきちんと現代にまで伝えられているって、すごい事ですよね?

この”羊羹”。糖度が非常に高いために、常温で長期保存できたりするんです。また、少量で高カロリーかつ、エネルギー変換効率が非常に高いんですね。そのため、非常食やスポーツなんかのカロリー補給食としても注目されるようになっているんです。伝統的な食文化が、その時代の需要傾向に合わせて色んな形に発展/活用されるようになるってとっても興味深いことだと思いませんか?

寒天

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“水羊羹”をはじめとする日本の”水菓子”を作る際に欠かせないのが”寒天”です。あ、寒天等を用いた水分の多いお菓子類のことを”水菓子”って言うんです。ゼリーなんかも、代表的な”水菓子”ですね。”寒天”は、天草(テングサ)、海髪(オゴノリ)等の海藻類に含まれる粘液質を加熱することによって抽出して冷やし固めた後、凍結、乾燥したもので、調理に使う際には熱湯で溶解させて用います。この”寒天”を用いた料理。実のところ、日本ではかなり昔から食されていたようです。”心太(トコロテン)”って呼ばれる料理(味付けによってはお菓子とも)がございまして。大陸から”羊羹”の調理方法が伝わるよりもずっと以前・・ なんと700年代頃には食されていた記録が残ってるんです。じゃあ、どうして”寒天”を用いた料理(調理方法)がもっと早くから広まらなかったの?って思いますよね? まぁ、単純な理由でして、凍結/乾燥して乾燥寒天にすると言う保存方法がようやく考案されたのが江戸時代初期の頃だったんですね。それまではあくまで生食用の食材だったわけです。そうして、”寒天”はやがて海外にも広く伝わっていきました。ただし、食材としてよりは、細菌等の医療研究の用途での需要の方が大きかったようですが。細菌などを培養するための培養地に非常に適していたんですね? そして現在。ゼラチンでは固められない一部果物類の果汁を冷やし固めることができる他、食物繊維が非常に豊富で、かつ脂質や糖質類の吸収を阻害すると言った健康食材orダイエット食材としても利用できるってことで人気なんだとか。いやはや、食材にしろ、調理方法にしろ、その歴史を辿ってみると面白いものですよね?