今回は、日本人が時節の移ろいや身の回りの自然を楽しむために行う催し事についてお話ししたいと思います。昔から、日本人は身の回りの四季の移り変わりや自然の豊かさ等を愛でると言いますか、それらを積極的に楽しもうとしてきました。そのために、色々と催し事なんかもしていたんですね? 神社などで執り行われる年中行事にも、やはり時節に則ったものが多いわけでして、先人達もそれらに因んだ催し事を楽しんでいたんです。今みたくSNSツールもなければ、Webコンテンツなんかもない。映画、音楽、TV、演劇、絵画、書籍と言った娯楽の類は圧倒的に少なかったわけです。それ故に、きっと先人達は現在の私達よりも、時間の移ろいに対して敏感だったのかもしれません。”暇つぶし”とか”時間つぶし”って言い方をすると、少し乱暴かもしれませんが。現代の私達からしても、ほんの十数年も世代が違えば、日常生活におけるそう言った”時間つぶし”の方法が全く異なってしまってますよね? 当然、興味を持つ対象や価値観なんかも違ってしまうわけで、それらを比較する対象が更に昔の人々となると・・ 果たして、今と昔、どちらが良いのかって考えると、なかなか難しいものです。まぁ、そうは言ってもですね? 現代の私達日本人も、何だかんだで今でも四季の移り変わりや自然の豊かさなんかを楽しもうって気持ちはまだまだあるんです。”情緒深さ”みたいなもの、或いは”意気込み”とでも言えるでしょうか・・

さてさて、四季の移り変わりや自然の豊かさを表す言葉として「花鳥風月」と言うものがあります。自然の美しい風景や情景、と言った意味合いです。ステキな単語だと思いませんか? で、この「花鳥風月」を愛でて楽しもう!ってわけです。四季折々の花の色や香り。どこからともなく聞こえてくる鳥の鳴き声。季節毎に異なる風や空気、雰囲気。満ち欠けを繰り返しながら夜を照らす月。(うーん、詩の才能が欲しいですね~・・)まぁ、とにかくですね? そう言ったものの微妙な変化を感じ取って、それらに感動を覚えるって言う感性や価値観が今も受け継がれているんですね。たぶん、受け継がれているんです・・ 例えば、こんな感じに~

・お花見:
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その季節の花を見て楽しむ日本古来の風習。春の時期に催される”桜”のお花見が代表的。近い時期では”桃”、”梅”の花なども。”桜”、”桃”、”梅”は昔から日本人に親しまれてきた花であることもあって、名所となっている場所がたくさんあります。

・お月見:
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その季節の月(主に満月)を見て楽しむ日本古来の風習。”八月十五夜(中秋の名月)”、”九月十三夜”、”十月十夜”が代表的。因みに、天候次第で月が見られない場合は、次の満月を待ったりして楽しんだりする場合も(”月待ち”)。

・もみじ狩り:
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秋中頃の紅葉したもみじを見て楽しむ日本古来の風習。”狩り”と言っても、別に狩らなくていいです。もみじに限らず、この時期は広葉樹が様々に色を変えるので、紅葉見物はとても人気があります。

・雪見:
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こちらは風習と言うものではありませんが。冬時期に必ず雪が降り積もるわけではない地域などでは、降雪/積雪を見て楽しんだりします。他には”初雪”を見て楽しんだり。

なかなか情緒深いと思いませんか? ただ・・ 現代の日本人がこう言った催し事を本来の意味合いで楽しんでいるかと言えば、少々怪しいところではあります。みんなで集まって騒ぐための”だし”にしているって面は否めないわけでして。”花より団子”なんてことわざもありますから。まぁ、でもみんなで楽しめるんなら、それはそれでいいんじゃないかと思いますが。季節のものに因んだ”お祭り”や”市”なんかも「花鳥風月」を楽しむ催し事の一種と考えて頂いていいでしょう。各地域毎に結構たくさんあったりしますが。”ほおずき市”や”風鈴市”なんかは、季節の話題を伝えるニュースなんかでよく取り上げられます。実際に、そう言ったニュースを目にしたりすると、「あー、そんな季節なんだなー」と感じたりするもんなんです。みなさんもご一緒にいかがでしょうか?

虫の音

日本には昔から”音”を聞いて楽しむ文化があります。”風鈴”や”ししおどし”なんかは、”音”を楽しむギミックとして海外の方にも人気だったりしますよね? 人の手によって生じさせる”音”ばかりでなく、自然が生み出す”音”もやはり興味の対象でした。風のそよぐ音、清流のせせらぎ、鳥や動物等と言った生き物の鳴き声、等々・・ 季節毎のそれらを敏感に感じ取って、その奥深い情緒を楽しんできたわけです。詩や和歌、俳句を始め、小説や映画と言った日本の創作物には、このような自然が生み出す”音”はしばしば重要な表現として登場します。季節や風景ばかりでなく、情感なども表す、言わばアイコンのような扱われ方をしているような”音”もあります。そんな自然が生み出す”音”の中でも、”虫の音(鳴き声)”に対する日本人の受け止め方と言うものは、少し珍しいものなんだとか。日本では、特に夏~秋の季節に野山で聞かれる虫の鳴き声を聞いて、あぁ、綺麗な音だな~とか、情緒があるな~って感じのことを思ったりするんです。基本的には騒音や雑音と言った受け止め方はしないんですね。この”虫の音”を楽しむ文化は、海外ではあまりないものなんだそうです。おそらく日本に生息している虫類がとりわけ綺麗な声で鳴いているわけではないと思います。海外にも珍しい美しい鳴き声を発する虫類がきっとたくさんいるんでしょうし・・ 興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、試しにちょっと”楽しんでみよう”って気持ちを持って”虫の音”に耳を澄ませてみて下さい。ひょっとしたら新しい感動が得られるかもしれません。