建物の内と外を明確に分ける意味合いの表れとも言えるのが、室内では”土足禁止”と言う習慣です。「履物を脱ぐ」という行為は、その建物の主であったり、その建物内で適用されるルールに身を預けるという意味を持ったりします。言い換えれば、相手に敵意がないことや敬意、信頼なんかを表しているわけです。勿論、床生活という生活スタイル故の衛生面からの理由もあるでしょう。気持ち的にも物理的にも、室内では地べたから距離を置きたかったんですね。

現在は日常生活の中で、机や椅子、ベッド等が利用されることが多くなっていますが、日本人の自宅は今でもほとんどが土足禁止です。スリッパ等の室内履き等は使ったりしますが、外とはやはり明確に区別しています。因みに・・ 他人の領域を侵して迷惑を被らせることを、「土足で踏み入る」なんて言ったりします。

社寺や旅館、飲食店等、和式の空間に足を踏み入れる際にはくれぐれもご注意下さい。後、脱いだ履物は揃えましょう。

“下駄を預ける”

“物事についてのその処理方法や責任を全て誰かしらに一任する”って意味合いの慣用句に”下駄を預ける”ってのがあります。”下駄”は、”草履”や”草鞋”と同じく日本の履き物の一種です。歌舞伎の登場人物なんかが履いてたりするアレです。現在はほとんど利用されることは少ないですね。”土足禁止”が習慣として定着している日本では、誰かの家の室内に上がり込む際には必ず履き物を脱いで、その家人に預けてたんです。つまり、自分が帰ろうと思っても、家人が履き物を返してくれないと自由に帰れないわけです。履き物を預ける=自分の意思では自由に外へ出られない・・ ってことで、用いられるようになった慣用句なんだとか。現在では、”相手を信用して物事についてのその処理方法や責任全てをその相手に任せる”と言う意味合いでも用いられたりしますが、元々は前述のような意味合いなんです。”土足禁止”が習慣となっている日本ならでは表現ですね。