「神社」で執り行われる神事の際に、お祀りしている神様に対してその神徳を称えて崇敬の意を表す文(詞)を奏上するのですが、この文章のことを「祝詞」と呼びます。一般的にはその「祭祀」を執り行う責任者、つまりは「宮司(神主)」さんが奏上します。当然執り行われる「祭祀」の種類によってその内容は異なるわけですが、大まかには「祭神」に対してその「祭祀」の意義と目的をお伝えするものになります。表記は基本的には「宣命書」と呼ばれる国文体です。「大和言葉(やまとことば)」なんて呼ばれる文体と同様のもので、現代の日本人が日常使用している日本語とは結構違ったりします。加えて、とても独特の節回しで朗誦されるものですので、日本人にとってもなかなか特別と言いますか、厳かな印象を受けるものだったりします。神様に奏上するとともに、その神聖な内容を参集した人々にもきちんと聞かせる意味合いもあったようですので尚更ですね。

「祝詞」は大きく分けると、以下のような感じになります。

・祝詞(のりと):
狭義での「祝詞」。神饌(しんせん)やその他の供物を奉って、神祇(じんぎ)をお祀りする際に奏上する詞です。
※「神祇(じんぎ)」はその「詞」を奏上する対象となる神様のことです。

・拝詞(はいし):
祭典を催さずに、神祇を拝する際に奏上する詞です。

・遥拝詞(ようはいし):
「拝詞」の中でも特に遠隔の神祇を拝する際に奏上する詞。

・祓詞(はらえことば):
修祓(しゅうばつ)を行う際に、祓の神様に奏上する詞です。

・祭詞(さいし):
例祭や鎮座祭、式年祭等で献幣使(けんぺいし)が神前にて奏上する詞です。
※「献幣使(けんぺいし)」とは、神社本庁から各神社の例祭に幣帛料(へいはくりょう)を供勧する使者のことです。尚、日本の神社は全て神社本庁が統括しています。

・御告文(おつげぶみ):
天皇自らが祭祀を執り行う際に神祇に対して奏上する詞です。

・御祭文(ごさいもん):
勅使(ちょくし)が神祇に奏上する詞。
※「勅使」は、特に天皇が派遣した使者のことを言います。

・策命文(さくみょうぶん):
山稜や御墓、墳墓等における祭祀で奏上する詞。

日本には古来より「言霊」信仰と呼ばれるものがあります。「言葉」一つ一つにも「力」があって、発せられたり記されたりした時点でそれぞれ何かしらの効力を有するという考え方です。つまり、日本神道は「言葉」をとても重んじる文化なんです。神様に奏上する「祝詞」というものは、神様に対して発する「言葉」であるわけでとても大切なんですね。上記のような年中行事として執り行われる「祭祀」では勿論のこと。神式の結婚式や厄除けの儀式等、ありとあらゆる神事において必ず奏上されるものです。機会があれば、是非経験して頂きたいと思います。