日本では、8月初めから8月中旬辺りまでの1週間~10日間くらいの時期を”お盆”って呼びます。グレゴリオ暦が用いられるようになった明治時代以前までは、もう一か月ほど前の時期に該当たりますね。”お盆”とされる期間は、地域によって結構細かく異なってたんです。何なら家毎に違ってたりすることもあったようでして。”お盆”は、先祖の霊を祀る一連の行事のことです。その起源については諸説ございますが・・ 元々日本には古来から祖霊に畏敬の念を示す信仰や風習がありまして、それらは万物に神様が宿っていると考える”八百万の神様”信仰と密接に結び付いていました。そこに更に仏教における祖霊を供養する”盂蘭盆会(うらぼんえ)”の風習が取り入れられたんだとか。この”お盆”の時期は、農作物の収穫時期である秋に向けて非常に大切な時期でした。また、その年の半分が過ぎた時期でもあったわけです。豊作の無事だったり、残りの年の半分の無病息災と言ったことを祈願する風習なんかがあったんでしょう。江戸時代頃には既に、この時期の前後数日をまとめて休日とする習慣があったそうです。現在”お盆休み”って呼ばれている夏季休業期間は、この習慣が元になっているみたいですね。そんなわけで・・ “お盆”はこう言った様々な風習等とも結び付いた結果、日本全国に広く定着していったと考えられています。
“お盆”で執り行われる先祖の霊を祀る行事の様式については、まぁ、非常にたくさんあったりします。一つ一つをご説明するのは大変ですので、一般的によく知られているものの概要をご紹介しますと・・ “お盆”時期、子孫の様子を見るために祖先の霊が現世に戻って来るんだそうです。ですから、子孫達は供物を用意してそれをお迎えするんですね。お仏壇やお墓にお供え物をしてお参りしたりするのはそう言う意味があるんです。この時期に行われる”お祭り”や”盆踊り”と言ったものも、その多くは祖先の霊を楽しませるための催し事のようなものなんです。そう言ったことを通じて、祖先への感謝の念や、これからも見守っていて下さいね~ってことをお伝えするってわけですね。で、”お盆”時期が終わると、祖先はまたあちらへ帰って行くと・・ とても大まかに説明してしまいましたが、人によってはとても大切な行事と考えている方もいらっしゃいます。信仰や宗教と密接に関係しているものですので、決して粗雑に扱ってよいものではありません。また、この”お盆”時期は、日本ではちょうど終戦記念日(8月15日)と重なっているんです。それ故に、戦後は特に一層慰霊の意味合いが強くなったと言えるかもしれません。おそらく、日本人にとってはちょっと平時とは気分が異なる時期なんでしょう。しかしながら、祖霊への感謝の念を大切にすると言う文化が様々な形で自然に定着しているのは、とても素敵なことだと思ったりするわけです。
近年、日本でもハロウィンを祝う文化がよく知られるようになりました。まぁ、意味合い的にはもっぱらお祭りイベントとして楽しむことを目的とした感じではありますが・・ 欧米圏におけるハロウィンは元々、死者の霊を迎えると共に、秋時季の収穫に対する感謝するための祭として祝われていますよね? そういう意味で、日本の”お盆”はよくこのハロウィンと比されたりすることがあります。異なる文化圏であるにも関わらず、よく似た性質の風習が出来上がっていると言うのは、とても面白いことだと思いますね。
盆踊り
“盆踊り”はお祭りの様式の一つとして、日本全国に広く定着している古くからの娯楽文化です。その起源は、”念仏踊り”等の仏教行事が元になっているという説や、”八百万の神様”等に対して執り行った雨乞いや豊作祈願のための儀式等が元になっているという説など、まぁ色々とあってはっきりはしておりません。室町時代くらいには、仏教の”盂蘭盆会”における死者の供養のための行事の影響を受けて、一般庶民の風習として執り行われるようになっていったようです。やがて、宗教儀式的な性質ばかりでなく庶民の娯楽としての性質を持ち合わせるようになり、日本各地に広がって行ったと考えられています。江戸時代くらいにはすっかり定着していたようです。必ずしも、”お盆”に開催されるわけでもなく、夏時期に行われるお祭りの一つって感じのものが多いです。その地域の一大祭りとして全国的に知られるようになっているものもいくつかありますね。”徳島阿波踊り(徳島県)”、”西馬音内盆踊り(秋田県)”、”郡上おどり(岐阜県)”なんかは特に有名です。踊り用の楽曲は、各地域の伝統的な民謡なんかが元になっているもの(”○○節”or”○○唄”なんて呼ばれていることが多い)もあれば、歌謡曲やポップスなんかも用いられます。それぞれ楽曲事に振り付けが決まっていたりしますが、それほど厳密ではないようです。居合わせた人みんなで楽しむことを目的としているため、見様見真似で何とかなることが多いでしょうかね。機会がございましたら、気軽に参加してみてください。
精霊馬(しょうりょううま)
“お盆”に用意されるお供え物の中でも、ひときわ目を引くのがキュウリとナスで作られたアレ。日本の風習についてお調べ頂いたことのある皆さんはご覧になったことがあるかもしれませんね?アレ、”精霊馬(しょうりょううま)”って呼ばれるものです。作り方はとっても簡単。キュウリとナスに4本、木の棒(割り箸や枝きれ等々)を突き刺して立つようにした人形の一種です。キュウリを用いて作る方は”馬”、ナスを用いて作る方は”牛”にそれぞれ見立ててるんです。お盆時期に、御先祖の霊をお迎え/お見送りするにあたって、お迎えする際は早く来て頂けるように”馬”を、お見送りする際はゆっくり安全にお帰り頂けるように”牛”を使って頂く、って言う気持ちを込めてお供えするんですね。(※ 逆に、丁寧にお迎えするために往路は”牛”で、遅れないようにお帰り頂くように帰路は”馬”で、って解釈の地域もあります)世間一般に知られるようになったのは江戸時代中頃以降くらいですかね。キュウリとナスは比較的全国で栽培できる作物だったことや、旬の野菜なので準備するのが容易だったことからお盆の風習として全国的に広まったと言われています。美味しい旬の野菜でもてなそうと言う気持ちの表れだったりもしたんでしょう。小さい子供なんかにも簡単に作れるものでしたから。見た目のユーモラスさや色合いはなかなかのものだと思いませんか? ちなみに、お盆時期が終わった後は、塩でお清めした半紙(白い)等に丁寧に包んで処分します。一部のお寺では、他のお供え物と一緒にお焚き上げして頂けます。