神社の神主さんがわさわさした紙束っぽいものが付いた棒を振っている儀式をご覧になったことはありませんか? 神社内の拝殿で執り行われていたり、企業の社屋内や、何かの建築現場っぽいところ等々、時期や場合に寄りけりで、色んなところで執り行われてたりしますが。アレ、”祓(はらえ)”って言う、神道における儀式の一つです。ちなみに、神主さんが手にしているあの紙束の付いた棒は”大幣(おおぬさ)”とか”御幣(ごへい)”って呼ばれる神具です。あの儀式は一体何なんだろうな~?って思われていた方もいらっしゃるでしょう。そんなわけで、今回は”祓(はらえ)”についてご紹介しようと思います。

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日本の神道において、身の回りや心身に悪影響を与えるものを”不浄(ふじょう)”と呼びます。この”不浄”は、罪や穢れ、災厄と言った、”良くないもの”全般を意味します。”厄(やく)”とも言いますかね。病気や怪我、事故/事件。不作や不漁と言った日常生活上の経済面での悪影響なんかもそうですし、台風や地震、疫病等々の自然災害なんかもそうです。個人やその周辺の知人、ひいては世間一般の人々全てに関わる、ありとあらゆる”悪いこと”や”良くないもの”なんかを全部引っ含めて”不浄”って言うんですね。それらの”不浄”を折を見て、あるいは定期的に取り除く/取り払う、そうすることで当面の間、”悪いこと”や”良くないもの”に苛まれないようにするために行うのが”祓(はらえ)”と言うものです。この”祓(はらえ)”と言う呼び方は、正式な呼称でして、一般的には”お祓い”って呼ばれることが多かったりします。神社は、この”祓(はらえ)”のための神事を執り行う役割を担っているんです。神道におけるありとあらゆる神事において、”不浄”を取り払うことはとても基本的な儀式とされています。”祓(はらえ)”そのものを大目的とした神事もありますが、実は全ての神事には必ずこの”祓(はらえ)”にあたる儀式が含まれているんです。神事には、時季的に決まって執り行われているものと、不定期に個人や団体/組織の要望に応じて執り行われるものがあります。前者は、各神社の年間行事とされていて、その地域や日本と言う国全体、世の中全体のために執り行われるものです。(※こちらの神社の年間行事の詳細については、このサイト内の「神社について」って記事でご紹介させて頂いております)地域の”お祭り”として、観光客が集まったりする有名なものもいくつかあったりしますね。その一方で、個人や団体/組織の要望に応じて執り行われるものが、一般的によく知られている、あるいはご覧になる機会が多い”祓(はらえ)”の儀式と言えるでしょう。神式の結婚式における平穏無事の祈祷として。企業等の団体/組織の年度初めの厄除け、商売繁盛を祈念するためのもの。何かの建築現場なんかで、執り行われるものは一般的に”地鎮祭”って呼ばれたりします。これは、主にその土地の神様に対して、ご挨拶を兼ねて工事作業の安全や無事を祈念するためのものです。個人にとっての”祓(はらえ)”としては、”厄払い”とか”厄除け”ってものがあります。日本では”厄年”と言って、ある年齢周辺を、身の回りや心身に悪影響が表れやすいとする考え方がありまして。それらを祓うための”厄払い”って儀式なんかはとてもよく知られています。もっと個人的な、また日常生活に取り込まれている”祓(はらえ)”の儀式の一つと言えるのが、個人宅での神棚への祈祷でしょうか。他にも、”盛り塩”をお供えしたりするのも”祓(はらえ)”の儀式の一つなんです。日本における昔から知られる”験かつぎ”、”縁起かつぎ”なんかも、一種の”祓(はらえ)”と言えるものが多くあったりします。

“祓(はらえ)”と言うものは、日本人の文化に非常に浸透しているんですね。それと意識されなくなっているものも多いですが、日常生活における習慣の一部になっているんです。日本の価値観をとてもよく反映している考え方の一つかもしれませんね。