皆さんは、家や建物なんかの玄関先や出入口に置かれた皿等に塩が盛られているのを目にしたことはありませんか? 一般的には、飲食店や旅館なんかで時々見られる風景だったりしますかねぇ。個人宅なんかでも同じようなものを目にすることがあるかもしれません。アレ、”盛り塩”って言います。”縁起担ぎ”、あるいは”厄除け”のための日本の風習の一つです。記録によれば、奈良時代(1200年くらい前)には既に行われていた風習みたいです。この時期は、ちょうど仏教が伝来してきた時期だったりするんですね。その後、仏教文化と神道文化は長い時間をかけてとっても複雑に関係し合っていくんです。そんな理由もあって、この”盛り塩”という風習の由来は、例によって諸説あったりするんですが・・ まぁ、おそらくは”神道”において執り行われる”神事”が元になっているんだろうと言われています。

世界中の各地域において、”塩”は非常に重要な資源として取り扱われて来ました。まぁ、”塩”は世界共通の生活必需品ですからね? 岩塩の採掘地や海等、”塩”を産出できる地域拠点の確保。製塩技術の開発。それらを運搬するための流通路の整備等々。その国や地域の発展と非常に密接に関係してきた物資と言えるでしょう。日本においても、それはやはり同じだったわけですが、人間にとっての生活必需品であると同時に非常に神聖なものとして扱われてきたんですね。”神道”において、良くないことや悪しきこと全般を指して”穢れ(けがれ)”と呼びます。この”穢れ”を祓うために執り行われるのが、”神事”と呼ばれる儀礼/儀式なんです。”穢れ”を祓うこと=神様に対する崇敬・畏怖・感謝って言ってもいいでしょう。そのため、この”穢れ”を祓い清めるために用いられるもの(”穢れ”を祓って、清浄にする力を持つとされたもの)は全て神聖なものとして扱われてきました。で、”塩”はその一つとされたわけでして。”相撲”も元々は”神事”の一つでして、土俵入りの際に力士が撒く塩も”穢れ”を祓うためのものです。つまり、”塩”は非常に強力な”厄除け”アイテムなわけです。まぁ、実際のところ、防腐/殺菌/除湿の効果なんかもありますから。良くないことや悪しきことを寄せ付けない、と言うことは、良いことを呼び込みやすくなる・・”縁起”がいい! おそらくそんな考え方によって、”商売繁盛”、”千客万来”の意味合いなんかも含まれるようになったんでしょう。現在では、部屋のインテリア的な意味合いでも取り入れられてたりしますね。おしゃれな小皿や”盛り塩”の型なんかも市販されてますし。”風水”なんかの要素も加えられて、カラーリングされた”塩”もあったりするようです。

そんな具合に、まぁ色んな要素によって現代化されている”盛り塩”ですが。”穢れ”を祓うと言う本来の効果?効用?を得るには、ある程度の作法に則った形で供える方が良さそうです。ただし、その作法も結構色んな種類があったりして困ってしまうんですが。まぁ、いずれの作法にも共通しているのは、ちゃんと畏敬や感謝の気持ちを込めて取り扱う、ってことでしょうか。設置する場所はいつも清潔にするとか、塩はまめに取り換えるとか・・ 当たり前と言えば、その通りなんですが。しかしある意味、そう言ったことを習慣化することによって自然と身の回りが綺麗に保たれるようになることで、日常生活が清浄化されるって意味合いもあるようです。たぶんそういう理由もあって、風習として取り入れられるようになったんでしょうね。

お清めの塩

日本におけるお葬式は”仏事(”仏教”において執り行われる各種儀式)”が元になっています。元々あった”葬儀”に仏教文化が取り入れられて産み出された儀式なんですね? で、その中に”お清めの塩”と呼ばれるものがあります。お葬式に参加した後に、”塩”を身体に振りかけることによって清めるんです。”死”は悲しみや寂しさをもたらす出来事と言うことで、”不幸”なこととして扱われたわけです。そう言った”不幸”は、”穢れ”を呼び寄せると考えられていたんです。現在の日本における仏式のお葬式は、前述したように仏教文化と神道文化が複雑に混ざり合うことによって生み出された葬送儀礼だったりするわけです。この”お清めの塩”は、正にその表れなんです。