日常生活における文化の基本要素とも言えるのが「衣・食・住」ですよね? 今回はその中でも「衣」に注目したお話です。世界各地域において、この「衣」文化は様々です。地形や気候によってその地域毎に異なる生活スタイルや、またその地域の歴史的経緯なんかが複雑に組み合わさって出来上がっているわけで・・ 掘り下げて調べていくと、当然のことながらそんな容易に把握できるようなものではありませんが。まぁ、それらすべてについて理解を深めずともですね? その歴史を積み重ねられた技術や技法、それらによって生み出された様々な利点、美点なんかを感じることはできるはずです。折角の機会ですから、日本の「衣」文化についても、やはりその素晴らしさを感じて頂ければと思います。ここでは、特に「生地」について取り上げてみようと。そのための、まぁ、ほんの少しばかりでもご参考になればってことで。



「衣」文化の基盤となるのが「生地」です。日本の「衣」文化で用いられる「生地」は大きく二つに分類されます。「織物」と「染物」。「織物」は、「生地」を織る前に糸を先に染めたもの。一方で「染物」は、「生地」を織り上げた後に染めたものです。「生地」は、その素材となる糸の原材料ばかりでなく、糸の縒り方や、織り方によって質感が変わります。手触りや色味、光沢などの風合いと言ったものです。勿論、その「生地」の模様も。「生地」を織るための糸にどのような前処理を施すか? どのように織るか? また「生地」を作る過程のどの段階において、「染める」工程をどのように行うか? これらがその「生地」の特徴を生み出す要素になっているわけです。で、これらの特徴は、日本国内の各地域によってまた様々に違うんですね? おそらくは、地域毎の地形や気候が非常に複雑だったために、その生活様式に合わせて様々に工夫を凝らしていったんでしょう。また、そういった技術や技法の伝播の仕方も大いに影響したと考えられています。それ故にですね? 訪れる地域毎に、それぞれ非常に特徴的な「生地」が生み出されていますからとても面白いんです。きっとお楽しみ頂けるかと思います。

それではこの辺りで、「織物」と「染物」の種類について、特徴的なものをざっくりとご紹介しておきましょう。それぞれの素敵なネーミングセンスと言いますか、その名前の音の響きにも、是非ご注目頂ければです。

織物


・絣(かすり)
“かすった”ような、或いは”擦れた”ような模様柄が特徴的な織物。「生地」を織る際に、糸を部分的に染めることによって”絣柄”が作られるんだそうです。

・紬(つむぎ)
蚕の繭から紡いだ糸を用いた絹織物の一種です。ただし、生糸を用いるのではなく、繭を真綿状にしたものから縒り出した糸(紬糸)を用います。糸の太さが一定でないために、生糸を用いた絹織物と比べるとその風合いや手触りが粗めな感じなのが特徴です。

・縮緬(ちりめん)
絹織物の一種です。”縒り”をほとんどかけていない経糸と、”縒り”を強くかけた緯糸で織ることによって、「生地」表面に独特の光沢を有するのが特徴。「生地」表面に生まれるきめ細かいシワの凹凸によって染色に深みが出るそうです。

・縮(ちぢみ)
“縮緬(ちりめん)”と比べて、緯糸により一層強く”縒り”をかけることで、「生地」表面に細やかなシワを生じさせているのが特徴です。絹糸の他にも、綿や麻などを用いたものが一般的。独特の肌触りを有します。

染物

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・友禅(ゆうぜん)
文様染めを代表する染色方法の一つです。「生地」を着物に仕立て上げてから、下絵を描いて、その表面上に糊置きすることで下絵の色同士が混ざらないようにして染めるのが特徴。

・小紋(こもん)
型紙等を用いて糊置きして染色することで、一定パターンの図柄や紋様等が生み出されるのが特徴です。

・中形(ちゅうがた)
“小紋”よりもやや大きめの型紙(中形)等を用いて染色する方法です。浴衣等の「生地」によく用いられたことから、江戸時代なんかには浴衣全般を”中形”と呼んでいたことも。

・絞り(しぼり)
「生地」の一部を糸などで括り付けて染色することによって作られる絞り模様が特徴。

・注染(ちゅうせん)
「生地」の染めたい部分に型紙で糊置きして土手を作って、その内側に染料を注ぎこんで染色する方法を用いたものです。

・藍染(あいぞめ)
植物の”藍(あい)”を染料に用いた染物。勿論、特徴はその独特の青。

「織物」「染物」の使い道は、何も衣服に限ったものではありません。日常生活に用いられる様々なものの素材として扱われています。帽子やその他の装飾品、バッグや小物入れ等々・・ 現在は、布地を用いた品物は身の回りにたくさんありますから、日常使いして頂けるものも多いんじゃないかと思いますよ?