今回は、”長寿のお祝い”の文化についてです。長寿をおめでたいこととして祝うと言う習慣は、やはり海外でも多く見られる文化のようですね? ちなみに、日本にも”敬老の日”と言って、高齢者に対する敬いを込めた休日が法律で定められていたりします。勿論、どれくらいの年齢を長寿と考えるか?と言う点については、宗教等を含む文化背景にも拠るわけですが。例えば欧米圏では、大まかには50歳or60歳くらいから祝い始めることが多いようですね。以降、10年毎にお祝いするんだとか。アジア圏ですと、中国や韓国等のように”十干十二支”の暦法に基づいて、”還暦”と呼ばれる60(10と12の最小公倍数にあたる)歳を一つの節目と考えることが多いようです。仏教徒の方が多いタイでは、以降12年毎の年齢をお祝いされるそうですね? 日本の”長寿のお祝い”も、この”還暦”を始まりとして、長寿を祝う習慣があります。それに加えて、以降10年毎の年齢。更には、十の位の数字と一の位の数字が一致する、所謂ゾロ目の年齢もお祝いします。なかなか多いですよね・・? 言葉や数字に関する”験かつぎ”が好きな文化故に、おめでたいことは多い方が良いって感じに増えていったような感じもしますが。なお… お祝いするそれらの年齢には、それぞれお祝いカラー(テーマカラー)のようなものがあったりするんですが、それらの由来には諸説あって、あまり定かではありません。以下では、それらをご紹介しましょう。
60歳
“還暦(かんれき)”と呼ばれます。十干十二支がひと回りして生まれた干支に戻ることをお祝いします。テーマカラーは赤色。前述のとおり、”十干十二支が一巡りする”ことから、”赤子(日本語では、Babyを赤子or赤ちゃんと呼ぶ)に戻る”ことになぞらえて赤色をお祝いカラーとしています。赤色には”魔除け”の意味合いがあって、赤子の産着なんかに用いられたりしたんです。それにちなんで、赤色の衣装(頭巾やちゃんちゃんこ)を身に着けさせたりします。かつては、一般的な定年退職年齢ともされていたことから長寿のお祝いとしては、最も広く知られたものの一つです。
70歳
“古稀(こき)”と呼ばれます。唐時代の中国の詩人・杜甫の曲江(きょっこう)の一節”人生七十古来稀也”が由来とされています。意味としては”七十年もの年月を生きる人は古くから稀である”って感じです。お祝いカラーは紫色or紺色とされています。
77歳
“喜寿(きじゅ)”と呼ばれます。”喜”と言う字が漢字の草書体が七十七に見えることからこう呼ばれるようになったとか。”七福神”や”七草”でも知られるように、”七”と言う数字は縁起が良いとされており、そのゾロ目にあたる年齢と言うのも大きな理由と言えるでしょう。お祝いカラーは紫色。ちなみに、古来より日本では紫色は最も高貴な色の一つとされています。
80歳
80歳は、”傘寿(さんじゅ)”と言います。漢字の”傘”は略字で”仐”と表記できるんです。つまり”八十”ってわけです。”八”と言う漢字は”末広がり”と言って、これも縁起の良い数字とされているんです。お祝いカラーは黄色(or金茶色とも)だそうです。
88歳
“米寿(べいじゅ)”と呼ばれます。由来は漢字の”米”を分解すると、”八十八”となることから。前述の”喜寿”と同様、縁起の良い数字のゾロ目にあたる年齢ですから、おめでたくないはずがないわけですね? お祝いカラーは金茶色です。金茶色のものって、正直あんまり馴染みがないですが・・ 例えば、黄鉄鉱とかでしょうか・・?
90歳
“卒寿(そつじゅ)”と言います。漢字の”卒”と言う字の略字が”卆”と表記されることから。”九”と”十”ですね? お祝いカラーは紫色。何か、また七十代のお祝いカラーに戻っちゃいましたね・・
99歳
“白寿(はくじゅ)”と言います。100と言う漢字は”百”と表記します。99は100から1を引いた数字ですよね? 漢数字の”百”から”一”の字を引くと・・ “白”。誰が思いついてしまったんでしょうか・・? どうも”喜寿”以降の由来を見るに、日本発祥の考え方なんでしょうかねぇ。勿論、お祝いカラーは白色です。
100歳
“百年=一世紀”と言うことで、”紀寿(きじゅ)”と呼ばれます。”百寿(ひゃくじゅ/ももじゅ)”とも言いますね。お祝いカラーは白色やピンク色だそうです。100歳の長寿ともなると、海外でも国や自治体等からもお祝いされることは多いみたいですね? ちなみに、日本では、総理大臣からの祝状と、国から銀杯が贈られます。
111歳
“皇寿(こうじゅ)”と言います。”皇”と言う漢字を、”白”(前述の”白寿”でご説明したように、”白”=99)、”一”、”十”、”一”と分解すると、その数字の総和は111。祝わなければです。”一”が三つも並ぶ数字ですし、縁起が良いことに間違いありませんので。ちなみに、お祝いカラーは特にありません。お祝いカラーは100歳を超えると、特になくなっちゃうみたいです・・
120歳
二度目の”還暦”と言うことで、”大還暦”と呼ばれます。
上記の他にも、66歳「緑寿(ろくじゅ)」、81歳「半寿(はんじゅ)」、95歳「珍寿(ちんじゅ)」、108歳「茶寿(ちゃじゅ)」なんてものもあったりします。ご興味を持った方はお調べになってみてくださいませ。
日本は先進国の中でも、国民の平均寿命が長いことで良く知られています。高度経済成長期以降、衣食住などの生活環境が大きく向上したことでそれが顕著になりました。医療技術の発展も非常に大きな要因と言えるでしょう。ただその反面、海外の他の国々でも問題とされているように、高齢者の数と人口に占める割合が共に上昇してしまう”高齢化”が大きな問題となっています。同時に出生率の低下によって”少子化”も加速してしまっている国々が非常に増えていますよね? まぁ、日本でも、これらはかなり深刻な状態になっているわけでして・・ 世界中の人々が、平穏に豊かに長生きできる社会にどうにかならないものかと思うばかりです。