日本では一年の中間の時期にあたる7月終わりから8月はじめくらいと、年の暮れの12月中旬から下旬くらいに日頃お世話になっている人達に対して御礼の気持ちを込めて贈り物をする習慣があります。これらはそれぞれ”御中元”と”御歳暮”と呼ばれます。”御中元”は、道教における年中行事”中元”が由来となっているそうです。道教において、この時期は死者の罪を取り扱う役目をする神様”地官大帝”の誕生日にあたる時期だったんですね? で、それをお祝いして感謝する行事が執り行われていたんです。そこで併せて、死者の罪が赦されるように天に願う行事が催されるようになったんですね。この年中行事は後に、仏教文化と習合することによって、日本では”お盆”と呼ばれる祖霊に感謝する一般的な行事へと変わっていきました。当然、このような年中行事は元々は当時の支配階級の間でのみ執り行われるものだったんです。しかしやがて、江戸時代になると商人や町民なんかにも広く知られるようになった結果、神様や祖霊への感謝と併せて、日頃お世話になっている人物に対して贈り物をするって習慣が根付いていったわけです。”御歳暮”の方はと申しますと・・ こちらは”御中元”のように、道教の年中行事が由来しているわけではありません。ざっくり言えば、年の暮れのご挨拶代わりみたいな感じですね。これは新年のご挨拶も兼ねたもので、まぁやはり”御中元”同様に贈り物をすることでより一層感謝の気持ちを伝えましょう、って具合に定着していったんですね。ちなみに、年始(1月1日~7日頃)のご挨拶代わりの贈り物のことは、特に”お年賀”って言います。
さてさて。この”日頃お世話になっている人達”にあたるのは、まぁ特にはっきりと決められているわけではありません。ビジネス上のお取引先の人達や同じ職場の上司、先輩、同僚、後輩。何かしらの修学等にあたって、教えを乞うている相手。親族や親しい友人、ご近所付き合いのある人達・・ つまりは、各個人が改めて”日頃の感謝”を伝えたいと思う相手であれば誰でも構わないわけでして。まぁ、就いている仕事分野によっては、現在でもとても大切な(ある意味、ビジネスマナー的なものが問われかねない)習慣だったりする場合もあるんですが。実のところ、この習慣は少しずつなくなりつつあるんです。特に、ビジネス上の贈答のやりとりなんかに関しては、その傾向は顕著です。理由は様々です。どういう弊害があり得るかは、何となくお察し頂けるでしょう。ただ、一般的にもこれらのやりとりは少なくなってきてるんですね。元々、日頃なかなか会える機会が少ない相手への感謝の気持ちを、せめてこの時期だけは・・ってな意味合いがあって広まった習慣だったわけです。しかし、情報伝達手段や交通手段、輸送手段等が発達した現代においては、そういった意味合いが薄れてしまったんだろうと言われています。まぁ、分からんでもない話ですが。
とは言え・・ですね? ある意味、風物詩とも言える習慣の一つなわけでして、元々の意味合いにちゃんと注視すれば、とても素敵な習慣だと思うんですね? 昨年は、COVID-19の世界的流行によって、他人との触れ合い方や関係性と言ったものを改めて考えさせられることが多かったと思います。そして未だに、終息していないわけで・・ ですから、より一層それらの大切さを感じる今日この頃です。いかがでしょうか? “御中元”、”御歳暮”とはまた別のものとしてですね? ありふれた日頃の感謝の気持ちを改めて誰かしらに伝えてみるには、いい機会ではないでしょうか?