日本の挨拶の所作で基本的なものが「お辞儀」です。昔から映画等でもよく日本人の所作として描かれてきましたし、海外で活躍する日本のスポーツ選手がアイコン的に用いていたりします。
言葉なしでも御礼や敬意、謝罪といった意味合いも含められるところ、また頭を下げる角度によってその度合いも表すことができる点が特徴的と言われていますね。まぁ、そのせいでペコペコと頭を下げてばかりで何を考えているのか分からないという、あまり芳しくない日本人のイメージが一部定着してしまったりもしたわけですが・・
言葉にできない / ならない心情だったり、白黒はっきり断定できないものや事柄を何とか表そうとしたものが日本の文化には数多くあります。日本語自体、曖昧なことやものを表現することには非常に長けた言語と言われますし。良くも悪くも「日本らしさ」の根源だったりするかもしれません。今回取り上げた「お辞儀」に関して言えば、「言葉だけで表し切れない心意」を表そうとした所作と言えばいいでしょうか・・?
ややこしい内容になりましたが、実際に「お辞儀」に接する場面ではそんなに難しく考えて頂く必要はありません。くれぐれもご心配なきよう。
目礼
例えば・・誰かと話をしている最中に、別の知り合いと遭遇した。或いは、誰かと話をしている知り合いに遭遇した。で、お互いにお互いの存在を認識しているようなシチュエーション。平たく言えば、お互いにちゃんと改まって挨拶ができないような場面って感じでしょうか。
そんな際に用いるのがこの「目礼」です。「お辞儀」の中でも最も動きの少ない形と言えるのがこれです。目と目を合わせて軽くお辞儀をする。ただしこの場合、お辞儀は必須ではありません。大切なのは目線を合わせて、目つきでもって気持ちを伝えるわけです。
改めてこう説明すると、とても高尚な感じがしてしまうかもしれませんが要はアイコンタクトです。おそらく皆さんも普段からしていることでしょう。
日本の挨拶は、「お辞儀」に見られるように非接触系が基本です。握手 / 抱擁といった相手と直接触れ合うものではありません。その辺りは日本人の気質に合っているのかもしれませんね。
会釈
さて、「お辞儀」の中でも最もカジュアル向けで、オールマイティな意味を持たせられるのが「会釈」です。自然な所作でできるようになればとっても便利ですよ。
大まかにはゆっくりやればやるほど丁寧な意味合いになると思って頂くといいでしょうか。
「ご機嫌よう」が「ご機嫌麗しゅうございます」に。
「ごめんよ」が「誠に持って失礼申し上げました」に。
「じゃあね」が「お別れするのは誠に心苦しい次第ではございますが… また一目でもお会いできることを心から云々」と言った具合に。
実際に使ってみると、「日本らしさ」というものを少なからず理解して頂けるかもです。
敬礼(お辞儀)
一般的に「お辞儀」と言うと、この「敬礼」が当てはまります。「ハンバーガー」という食べ物の中の「ハンバーガー」という商品みたいなものですね。柔道、剣道等で見られる「礼」はこれにあたります。接客の場なんかでも非常によく用いられる挨拶ですので、おそらくは一番目にされる機会が多いと思います。
ポイントは頭を下げるだけでなく、上体をちゃんと倒すことでしょうか。ただし背筋は真っ直ぐに。しかし何よりも大切なのはやはり「気持ち」ですよね。因みに、手の平を合わせる必要はありません。額に片方の手をかざす必要もありませんので。
最敬礼
「お辞儀」の中でも最も畏まった形がこちらの「最敬礼」です。とても深い「お辞儀」。ものの説明によっては、上体を90度くらいまで曲げるのが作法とされてたりもします。相手に対して最も敬意を示す場合の「お辞儀」と言うわけですね。
比較的身近な場面を挙げるならば、神社に参拝した際の神前で行う「礼」でしょうか。実のところ、日本人でもあまりできていなかったりするのですが・・
日本では昔からありとあらゆる場面で「礼」というものが重要視されます。形骸化してしまっているものも多々あるのは否めないところではありますが・・ただ、今も昔も変わらないのは行為そのものの良し悪しよりも、やはり「気持ち」なんです。そう言う「気持ち」が込められた挨拶。それが「お辞儀」だということを少しでも知っておいて頂ければと思います。