出汁に”味噌”を溶かし込んで、野菜や豆腐類、海藻類、肉類、魚介類等の具材を加えた汁物料理です。「和食」を代表する料理の一つと言っていいでしょう。日本の伝統的な料理形式として知られる”本膳料理”、”懐石料理”、”会席料理”等でも必ず提供される料理ですし、また全国各地の郷土料理となっている味噌汁類も非常に多くあります。一般家庭でも日常的に食されてきた、日本人には非常に馴染みの深い料理です。日本において、”味噌”はかなり昔から食されてきたようです。あ・・ 一応、念のために”味噌”について簡単におさらいさせて頂きましょうかね? “味噌”は、大豆や米等の穀物類に塩と麹(穀物類を発酵させたもの)を加えて発酵させた調味料です。原材料や違いによって豆味噌、米味噌、麦味噌と言った種類に分けられます。また、製法や発酵度合い等の違いによって、赤味噌、白味噌(これら両方を混合した”合わせ味噌”なんてものもあります)と言った分類もされます。汁物料理や煮物料理、炒め物や焼物料理等々、様々な料理において調味料として用いられます。ちなみに、近代以前までは、”味噌”単品で一つのおかずとして食されることも割と多かったようです。”味噌”の起源については諸説ありまして、大陸から伝えられたとも、国内で生み出されたとも言われてます。”味噌”の原形と考えられている醤(ひしお)に該当るものは、少なくとも紀元前には作られていたようで、古墳時代と呼ばれる3世紀後半頃~6、7世紀頃には麹発酵されたものが作られていたんだとか。”味噌”と言う言葉自体が文献上登場するのは平安時代(8~12世紀)頃だそうです。その後、国内各地域で武家が台頭するようになるにつれて、”味噌”の製法も全国各地へと広まり、一般にも食されるようになりました。
そんな”味噌”が汁物料理の調味料として用いられることが多くなっていったのは、室町時代(14~16世紀後半)頃だと言われています。兵糧食として重宝されたんですね? “味噌”はある程度長期保存が可能でしたし、栄養も豊富(大豆を主原料にしたものは、当時の日本人の食生活において貴重なタンパク/ビタミン源でした)。調理が容易で、一度に大量に作ることができる。基本的に、何かしらの出汁に”味噌”と適当な具材を煮ればそれっぽいものが出来上がりますから、兵糧食としてお誂え向きだったってわけです。その後も、江戸幕府による全国統治がなされる1600年頃までは全国各地で戦が行われておりました。そのお陰もあって、”味噌汁”はあっという間に一般に食されるようになったんでしょう。郷土料理として食されている”味噌汁”料理の多くは、この頃生み出されたものが元になっていることが多いようですね。
近代以降、西欧を中心とした海外の料理文化がたくさん流入してきましたが、”味噌”を用いた料理は一般家庭において根強く残り続けました。特に”味噌汁”は、西欧料理と一緒に食してもどうやら違和感がなかったんですね? 大体どんな具材を入れても問題がありませんでしたから、メイン料理に合わせて具材を変えることによって献立の組み合わせの調整が容易だったんでしょう。ほぼ毎日、何なら毎食必ず食卓に並んだりすることも珍しくなかったんです。その結果、日本における代表的な”家庭の味”とも言える料理となったわけです。
まぁ、とは言え。現在は、各家庭で毎食調理をするって機会が減りつつあることもあって、”家庭の味”って料理ではなくなりつつあります。その代わりと言うか、何と言うか・・ インスタントの”味噌汁”が非常に人気になっていたりします。スーパーやコンビニエンスストアなんかには必ず陳列されてますね。で、これがまた、かなり種類豊富です。実際のところ、手軽な上に美味しいものが多いですし。時代の流れのせいもあって、日本の各一般家庭で「和食」が調理される機会は少なくなってきているようです。煮物料理や焼物料理等も、調理済みのものが商品化されていて容易に手に入れられますから。”味噌汁”も然りってわけですね。うーん・・ ある意味、困ったもんですねぇ。
まぁ、試そうと思えば、いつでも手軽に美味しい”味噌汁”が食べられる今日ですが。そんなとても恵まれた?現状を踏まえた上で、それでもご自身で”味噌汁”を作ってみようかな~ってお考えの方達に是非とも覚えておいて頂きたいことをいくつか。美味しい”味噌汁”を作るためのポイントみたいなものです。
“出汁”が重要
和食料理において最も重要な要素・・ それは、やはり”出汁”です。用いる”出汁”の種類や、その質の良し悪しによってその出来は大きく変わります。当然、具材として加える食材からも旨味は出ますが、”味噌汁”の味の基本となるのは”出汁”です。ちなみに、市販されている”味噌”には”出汁”入りのものとそうでないものがあります。あらかじめ”出汁”が入っているものを使えば、”出汁”を作る手間を省いてもそれなりに美味しい”味噌汁”を作ることができます。こだわりたい方は、やはり”出汁”作りから。”味噌”を購入する際には必ず確認しましょう。
“味噌”の選定
歴史の長い調味料ですから、”味噌”はと~ってもたくさんの種類があります。市販されているメーカー商品だけでもいっぱい。加えて、地域毎に製造されているご当地商品みたいなのも多くあります。まぁ、各家庭で作ることもできちゃいますし。是非、まずは色々試してみましょう。”あ、コレなら毎日味わいたいかも・・”って思えるものにいつか出会えるはずです。
煮込み過ぎない
“味噌汁”は煮込み過ぎてはいけません。灰汁が出ちゃいますし、具材や”味噌”自体の風味が損なわれます。ビタミン類等の栄養分も失われてしまう恐れがありますし。そもそも、よ~っく煮込むのは”味噌汁”とは別料理(”味噌煮”って料理)ですので。
ご興味がわいてきましたか? “味噌汁”を作る際には、是非思い出して下さいませ。